事業創造プロセスの起点となる「バリュー・プロポジション・キャンバス」
――「バリュー・プロポジション・キャンバス」の使い方について、さらに詳しく教えていただけますか。
河野:
まず基本的なスタンスとして、顧客は商品そのものを求めているのではなく、「問題(Job)」を解決するために、商品やサービスを「雇っている」と考えます。顧客のジョブにフォーカスすることで、顧客の本質的なニーズとかみ合った価値を発想できるようになります。イノベーションを目指す際には、この視点が非常に重要です。
このときのジョブやペインの見極め方が特に肝心で、顧客のインサイトを発見するための様々な手法も組み合わせて、未解決で重要なジョブや、既存のソリューションで十分解決できていない不満やフラストレーション(ペイン)への洞察を深めることが、より本質的な価値提案をするためのコツと言えるでしょう。
――では、全ての起点ともいえるわけですね。これをどのようにして、事業創造プロセスの一部として組み込んでいくのでしょうか。
河野:
顧客と顧客価値についての仮説をバリュー・プロポジション・キャンバスでデザインし、「ビジネスモデル・キャンバス」と行き来しながら、ビジネスモデルを検討します。さらに顧客へのヒアリングやプロトタイプで検証を行いながら、改善や変更を繰り返していくのです。
このとき、決して単調な一方通行ではなく、行きつ戻りつしながらの、試行錯誤を前提とした複雑なプロセスとなります。