サステナビリティの経営ごと化で生まれた新たなCxO
──近年、「CSuO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)」を新設する企業が増えてきていますよね。どのような役割を担うポジションなのでしょうか。
尾山耕一氏(以下、敬称略):細かい活動については企業ごとに異なるとは思いますが、その名のとおり、組織のサステナビリティ戦略推進を中心となってけん引する役割を担っています。「CSO」と略されることもありますね。事業活動やバリューチェーンにおけるサステナビリティ戦略の立案はもちろん、経営陣とのコミュニケーションや従業員エンゲージメント向上のための社内発信、そして社外ステークホルダーへの報告や対話を行うことが主な役割です。
──CxOの中でも、これまではあまり聞いたことがなかった役職名です。近年増加している理由は、やはりESG経営やサステナビリティ推進に対する関心が高まっているからでしょうか。
尾山:それは間違いないでしょうね。サステナビリティは企業経営において、もはや最重要課題の1つとなっています。2006年に国連でPRI(責任投資原則)が発足し、「投資家はESG経営に取り組んでいる企業に投資すべき」という原則が出されて十数年が経った今、「自然資本や人的資本などといった非財務価値への投資が、最終的には長期的な財務価値の向上へと結びつく」という認識は、企業や投資家だけでなく、消費者一人ひとりにも浸透しつつあります。こうなれば、投資家がESGに関する情報の開示や、積極的な施策の実践を企業に望むようになるのはもはや必然でしょう。
反対に、透明性の高い情報開示やESG経営に向けた戦略の立案、施策の実践などを高いレベルで実現できれば、ステークホルダーの信頼と期待を集め、事業拡大の機会を得られる可能性があります。
こうした対応を担う担当者を“CxO”という経営層クラスに設置するのは、サステナビリティの意識を組織に実装し、全社的なESG経営をより強力に推進するためです。欧米では日本よりも前からCSuOの設置が進んでいましたが、対等で頻繁な経営陣とのコミュニケーションや、全社へのメッセージ発信を効果的に進めていくためには、やはりその分野のスペシャリストを経営層に配置することが有効な手段となります。