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ビジネスアーキテクト養成講座 for DX

デジタル経済を読み解くための重要なトレンド──プロダクトとサービスの融合の先にあるxOSの覇権争い

第3回

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 連載「ビジネスアーキテクト養成講座 for DX」の第1、2回では、DXの本質、具体的にはDXの定義に含まれるキーワードについて触れていきました。今回は、「デジタル経済を読み解くための重要なトレンド」と題して、2つの異なる(または対立する)従来のコンセプトが、デジタル経済の進展に伴って、融合化されていき、その境界線が不明瞭、または両極化されていくという大きなトレンドについて整理していくことにしましょう。

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プロダクトとサービスの融合

 1つ目のトレンドは、「プロダクトとサービスの融合が進んでいく」というトレンドです。

 現在、XaaS(Xをサービスとして提供する)というコンセプトが普及しつつあります。XaaSのタイプの1つとして「プロダクト・アズ・ア・サービス(PaaS)」があります。これは、プロダクト(ソフトウェアを含む)を売り切りで販売するのではなく、典型的にはインターネットやクラウドを通じて、そのプロダクトの利用に関して顧客が必要とするものを継続的にサービスとして提供していくことを狙いとするものです。

 PaaSにおける「プロダクト」とは、主に家電、カメラ、自動車といったB2C向けの耐久消費財や、機械設備のようなB2B向けの資本財です。

 20世紀の工業化時代において、このようなプロダクト群(特にB2C向けの耐久消費財)は、メーカーは物理的な流通ネットワークを通じて売り切り販売し、保守や修理といったアフターサービスはその流通プロバイダーやメーカーの系列子会社などを通じて行われてきました。

 現代においては、消費者サイドが求める「所有から利用」への価値観のシフト、生産者サイドが求める「スポット販売から継続的な収入」への収益モデルのシフト、社会的・マクロ経済的な視点からは「大量生産/大量消費を前提とした線形経済から循環経済」へのシフト、そしてこれらの実現を支えるデジタルテクノロジーの進化がPaaSのトレンドを後押ししています。

プロダクト・アズ・ア・サービス
図1:プロダクト・アズ・ア・サービス

 例えば、「LaaS(ライティング・アズ・ア・サービス:光をサービスとして提供する)」というサービスコンセプトがあります。これは、商業施設、地下鉄や道路といった大量の電球を保守しなければならない組織をターゲット顧客にしたもので、電球の据え付けや交換、電球の自動オンオフ、光度の調整、予防保守といった付加価値サービスを定額従量制による課金で提供しています。これを可能にするテクノロジーが、センサーが装着されたLED電球のネットワークやクラウドの存在です。

 またTeslaは、自動運転を実現することで、同社の自動車の所有者に対して、乗っていない時間には無人タクシーとして利用することで、その所有者に収益が入ってくる仕組みを将来的に計画していることを発表[1]しました。

 このように、先進的なメーカーはDXを推進していく中で、サービス業への転身(脱メーカー)を図っている一方、従来の非メーカーがプロダクトを販売するというトレンドも見逃せません。

 その代表格が、AmazonやGoogleです。ただし、これらの企業は、最初からプロダクト単体を販売して儲けるというビジネスモデルを採用していません。

 例えば、Amazonのデバイスはほぼ原価で販売されているようです。これは、同社がデバイスの販売で収益を得ようとしているのではなく、同社のデバイスを通じて利用することができるアプリやコンテンツの販売から収益を得ようするビジネスモデルを採用しているからです。これは、物理的なプロダクトは、付加価値のある継続的なサービスを提供するための「器」となる色彩が濃くなってきていることを示唆するものでしょう。

 プロダクトを安価または無料で提供し、消耗品で儲ける収益モデルは、ジレットモデル(剃刀と替刃、プリンターとトナーなど)と呼ばれることがありますが、プロダクト・アズ・ア・サービスは、収益モデルという視点から「デジタルジレットモデル」と呼んでもよいでしょう。


[1]Laurence Iliff「Musk expects volume production of new Tesla robotaxi by 2024 after record Q1 earnings」(Automotive News/April 20, 2022)

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

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