デジタルビジョンと戦略テーマの設定
前回は、DXに対して本格的に取り組む前にやっておくべき1つ目の準備作業である現行ビジネスモデルのアセスメント(内部環境および外部環境)について触れました。
2つ目の準備作業は、デジタルビジョンと戦略テーマの設定です。本記事では省略しますが、より実践的には、これら2つの準備作業とともに、SWOT分析、シナリオプランニング、ビジネスモデルのストレステストなどのワークショップやディスカッションを一緒に行っていくことが効果的です。
DXを円滑に推進していくためには、経営トップがデジタルビジョン(DXを通じて、将来における望ましい自社の姿)を簡潔かつ明白なステートメントで、全ての利害関係者に伝えることが不可欠となります。なぜならば、変革には大きな抵抗がつきものだからです。
優れたビジョンは、少なくとも3つの要件が備わっていなければなりません。1つ目は、従業員、顧客、パートナー、株主といった利害関係者を鼓舞するものであることです。2つ目は、企業名が分からなくても、事業概要や組織文化が、第三者から容易に想像できるものであることです。3つ目は、ビジョンが実現されていることが具体的に認識できるものであることです。
デジタルビジョンとともに、その実現を支える戦略テーマを設定することも重要です。ビジネスモデルとは、組織が価値を生成・提供、獲得する方法の論理的根拠を説明するものであることから、主要な戦略テーマは以下の4つの側面を考慮する必要があるでしょう。
- 価値:プロダクトやサービスの価値を最大化するために、何に焦点を当てるべきか? ※例:オンデマンドによる革新的なサービスを継続的に市場投入すること
- 価値提供:顧客の購買に関する労力や時間を最小化するために、何に焦点を当てるべきか? ※例:顧客ごとにパーソナライズ化された極上の顧客経験を提供すること
- 価値生成:オペレーションのコストを最小化するために、何に焦点を当てるべきか? ※例:信頼性と効率性を備えたオペレーション基盤を構築すること
- 価値獲得:さらなる成長の原資を最大化するために、何に焦点を当てるべきか? ※例:継続的かつ安定した、収益構造をもつこと
これら4つの戦略テーマは、戦略計画の策定と業績評価に対する代表的なフレームワークであるバランストスコアカードにおける4つの視点(学習と成長の視点/顧客の視点/業務プロセスの視点/財務の視点)と同調させることができます。