EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)は、データサイエンスチームがライフサイクルアセスメント(商品の原料調達から、生産・流通・廃棄・リサイクルまでにおける環境負荷を定量的に算出するための手法)や計量経済学(経済関連データを対象とし、統計手法を用いて経済的関係性を実証・分析する学問領域)における知見を用いて、事故や災害などにより損壊した車両の買取や、リユース・リサイクルなどを手掛けるタウ社の事業が創出する環境価値・社会価値の定量化を支援したと発表した。
同支援を行ったEYSCのデータサイエンスチームは、統計・機械学習、計算機科学、経営工学、計量経済学などデータに基づいた意志決定を行う、データサイエンス関連分野における研究経験をもつメンバーにより構成。高度な分析を活用して、ビジネスの意思決定を支援するチームだという。今回、計量経済学などを用い、タウ社の非財務情報開示を効果的にするための「CO2排出削減量の評価モデル」および「社会価値評価モデル」を構築し、定量化を支援したと述べている。
タウ社は、日本では交通事故や災害などにより損壊した車両(損害車)を、損害状況に応じた最適な利用方法を判定してリユース・リサイクルする「カー・トリアージ」の実践を基幹事業としている企業。カー・トリアージのもたらすCO2排出削減効果などの環境価値、および新興国の経済発展への寄与度における社会価値をステークホルダーにとってより理解しやすい形で示すことで、ステークホルダーの事業への理解を促進しようと各価値の定量評価を試みていたという。
支援概要は以下のとおり。
1. カー・トリアージにおけるCO2排出削減量のライフサイクルアセスメント
タウ社の推進するカー・トリアージでは、損害車の修復や部品・素材の再利用を促進することにより、CO2を大量に排出する新車の製造や部品・素材の新規生産の削減に貢献するとしている。
今回、同事業がCO2排出にもたらす影響を定量化するため、ライフサイクルアセスメントモデルを構築。事業の上流・下流を含めたライフサイクルでのCO2排出削減への貢献度を定量化した。また、ステークホルダーにとって理解しやすい結果の見える化を目的に、一般的な乗用車1台を新車ではなく再生車に変更した場合、平均的にどの程度のCO2削減を実現しているかを試算した。
2. カー・トリアージのもたらす社会価値の定量評価
タウ社のカー・トリアージは、新車より安価な損害車を輸出することで、新興国における自動車の普及を加速させ、モータリゼーションの進展に貢献しているという。
同プロジェクトでは、統計学・計量経済学の研究経験を持つメンバーを有するEYSCのデータサイエンスチームの支援により、タウ社の損害車主要輸出先であるモルディブを対象に、損害車輸出による失業率の改善度合い、一人あたりGDPの増加幅を定量評価した。同プロジェクトでフォーカスした各国の失業率・GDP、およびタウ社の損害車輸出量は、さまざまな要因が相互に影響しあって変化するため、一般的な集計のみでは正確に定量評価を行うことは困難だとしている。同プロジェクトでは、計量経済学の手法を用いることで、信頼性のある社会価値の定量化を行うことに成功した。