1年で5社を輩出したdocomo STARTUPのコンセプト
「docomo STARTUP」は、NTTドコモの社内起業制度だ。不確実ながらシナジーの可能性がある“未踏”領域を探索することを目的に、社内起業を促進している。
特徴は、「起業家ファースト」かつ「オープン」であること。社内起業家は、社外からリードインベスターを招くことを条件に、ファウンダーストックを携えてスピンアウトすることが可能で、将来的にはExitを通して適切なリターンを得られる設計になっている。また、NTTドコモ以外の企業とも連携を深められ、出口戦略としてM&Aも選択可能だ。
この「docomo STARTUP」を開始したのは2023年7月。「社内起業制度自体は2000年代初頭から存在したが、『docomo STARTUP』に改組したことで潮目が変わった」。そう語るのは、NTTドコモで経営企画部 事業開発室長を務める原氏だ。エンジニアとして無線基地局の開発に従事した後、日米スタートアップ投資を含むオープンイノベーションを担当し、シリコンバレーのCVC支店長に就任。経営企画での中長期計画策定や人事業務にも携わった経験から、大企業とスタートアップ双方の文化を理解する“バイリンガル的な存在”として自らを位置付ける。

現在は、経営陣がコミットする「トップダウンイノベーション」、スタートアップと協業する「オープンイノベーション」、社内起業を土台にした「ボトムアップイノベーション」と、全方位の事業創出を管掌する。
その言葉を裏付けるように、制度開始後わずか1年で5社輩出という飛躍的な成果を上げた。「『起業家ファースト』と『オープン』というコンセプトが、社内起業にいかに大きなインパクトをもたらすかを実感した」と原氏は続ける。そして、この新たな流れから生まれた1社が、山本氏が立ち上げたRePlayceだ。
なぜ通信のドコモから教育事業が生まれたのか
NTT東日本でキャリアをスタートさせた山本氏は、その後NTTドコモに入社し、「docomo STARTUP」の前身となる社内起業制度で事務局運営に従事。社内起業家を支援するかたわら、自らも事業を立ち上げた。「docomo STARTUP」の創設時には、「私のためにできたのではないかと思うほど興奮した」という山本氏。迷わずスピンアウトを決意し、2024年4月にRePlayceとして独立を果たした。
RePlayceが手がけるのは教育事業だ。社会や仕事について学ぶオンライン部活動「はたらく部」と、自らの興味に応じて自由に学べる通信制高校サポート校「HR高等学院」を展開。高校における探究学習の必修化という流れも受け、子どもたちの自律的な学びを支援している。「日本一、社会とつながる学校を作りたい」という想いから、NTTドコモを含む様々な企業と連携し、共同でPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)カリキュラムを開発・提供しているのも大きな特徴だ。
だが、「そもそもなぜ、このような事業が『docomo STARTUP』で採択されたのか」という疑問が浮かぶ。同制度がNTTドコモの“未踏”領域を対象としているとはいえ、教育領域は本体事業から見れば完全なる飛び地であり、社内に知見が豊富にあるとは考えにくいからだ。「docomo STARTUP」は、どのような基準で事業を選定しているのか。
