事業成長の成否を分ける“重要ファクター”は何か
前回までに取り上げた「インキュベーション戦略」では、会社全体のビジョンを描き、それを実現するための新規事業開発に関する方針や戦略を策定。これにより、経営資源を適切なテーマや領域、市場に対して中長期の目線で投資するポートフォリオを組み、再現性の高い新規事業開発を実現するための考察をしてきました。
一方で、せっかく策定した戦略も、それが高いレベルで実行されて継続的に成果を創出できる状態が実現できなければ何の意味もありません。特に、不確実性が高い新規事業の現場は、時間をかけて検討した戦略どおりにことが進まず、実行しながら素早く方向転換(ピボット)を迫られることも日常茶飯事です。
そのため、質の高い挑戦を量産し、それを再現性高く継続して実行するための「組織と人材」こそが、成否を左右するといっても過言ではありません。
米マッキンゼー・アンド・カンパニーは、事業成長を決める真の要因は「戦略」「実行力」「リーダー」「市場」の4つであると指摘していますが、そのうち7割以上は市場という単一要因によって説明できるとしています。
裏を返すと、選定している市場さえ適切であれば、成否を左右するのは、戦略・実行力・リーダーという3つのファクターだと言い換えることもできます。これは長年、新規事業開発の現場で様々な事業を見てきた経験則と照らし合わせても違和感はありません。
再現性を高める組織作りには何が必要?
そしてこの3つの要素は、実は組織と人材の中でも、特に事業を牽引するリーダーに関するものだと考えられます。「戦略」はビジョンを実現するためにリーダーによって策定されるケースが多く、また「実行力」も、リーダーを中心としたチームの人材の能力やマネジメントによって生み出されます。
スタートアップ企業に投資するVCが、企業の何に注目して投資を決定したかを調査すると、参入する市場や事業アイデアと同様に、リーダーであるCEO(最高経営責任者)や経営陣が優秀で熱量が高いチームかどうかを非常に重視しています。
むしろ、市場や事業アイデアの方向転換が当たり前のスタートアップの世界では、主にチームを見て投資判断を下す例も珍しくありません。
では、新規事業開発の再現性を高める組織作りには、何が重要になるのでしょうか。筆者は、大きく4つのステップがあると考えています。
