1.調査の概要・目的
NPS(ネット・プロモーター・スコア)という指標は、顧客が企業の商品やサービスをどの程度推奨しているかを計るもの。推奨度が高ければ高い顧客ほどリピート率が高く、口コミによる新規顧客獲得にもつながるため、NPSを向上させることで収益を上げることができるとされている。
このレポートでは日本におけるインターネットショッピングサイト大手であるAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3社について、以下の内容を調査した。
- インターネットショッピング市場においてNPSは収益に直結するか
- NPSを向上させるキーファクターはなんであるかを明確にするか
2.データ全体から見るNPSの有効性
※データ全体とはAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングを合わせたものを指す。
NPSが売り上げに直結する理由として、(1) 既存顧客のリピート率向上、(2) 新規顧客の獲得という2つの側面が挙げられる。
■推奨度が高い顧客は、3か月に1回以上サービスを利用する割合が80%
批判者と推奨者別に3か月に最低1回以上インターネット上で商品を購入する人の割合を比較したところ、批判者のうち3か月に1回以上購入する人は55%なのに対し、推奨者は80%の人が3か月に1回以上商品をネットショッピングを通して購入していることがわかった。
■推奨度が高い顧客の90%はポジティブな口コミを拡散する
今回の調査によれば、推奨者は批判者の二倍以上の割合で実際に他人にサービスを進めたことがあると答えている。また、推奨者の口コミのうち90%がポジティブな内容のコメントなのに対し、批判者の口コミのうち否定的な意見は28%にとどまった。従って、推奨者は批判者に比べポジティブな口コミを実際に広めることが多く、新規顧客の獲得に貢献していると考えられる。
3.NPS向上のためのキーファクター
■顧客推奨度の向上には「商品の見つけやすさ」が最も重要
NPSに影響を与える要素が何かを特定するため、商品の見つけやすさ、決済のしやすさ、配送時間、サポート対応に関して満足度を計測し、そのうえで統計的手法を用いてどの満足度がNPSに影響を与えているかを分析した。その結果、4つの質問項目の中でも特に「商品の見つけやすさ、選びやすさ」についての満足度が最もNPSに影響していることが分かった。
■品揃えの多さと検索性を高めることが効果的
また、商品の見つけやすさについて詳しく分析すると、「品揃えの多さ」と「検索のしやすさ」についてのコメントが多く、これらの満足度を向上させることが、NPSを向上させるために有効であることが分かった。
4.Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの企業別分析
■AmazonがNPSランキング1位
企業別にNPSを集計した結果Amazonが一番高く29ポイント、次点で楽天市場が11ポイント、そしてYahoo!ショッピングが-12ポイントという結果になった。
■全体的に否定的なコメントが少なく、「発送」に関心が集まるAmazon
業界最大手でもあるAmazonは、他社に比べ「発送」に関する肯定的なコメントが多くみられた。また、否定的な意見の内容としては、「梱包が過剰である」や「ポイントが付かずお得感がない」といったコメントが目立った。
■店舗への「信頼性」と商品の「見つけやすさ」に否定的なコメントが集まる楽天市場とYahoo!ショッピング
楽天市場に対する否定的なコメントの割合としては14.1%、Yahoo!ショッピングは20.7%とNPSが低い企業ほど否定的なコメントの割合が増えるという結果になった。
また、両者とも出展者に対する「信頼性」に対して不満の声が多く、今回の調査の質問項目にはなかった要素がNPSに影響を与えている可能性が考えられる。加えて「見つけやすさ」に関しては「表示される商品が多すぎて選びづらい」や「HPがごちゃごちゃしていてみづらい」などといったコメントが多く見られた。
まとめ
今回の調査では、下記の3つのことが判明した。
- インターネットショッピングサイトサービスでは、推奨者は批判者に比べより購入頻度が多く、サービスに関する肯定的な口コミを広めてくれる。
- 推奨者を増やすためのキーファクターは商品の「見つけやすさ」にある。
- 商品の「見つけやすさ」に関する満足度を向上させるためには、単にサイト上で取り扱っている商品の品揃えを増やすだけではなく、消費者が求めている商品を見極めて消費者のためにあらかじめ選択肢を絞って掲示することが重要である。