AIが法務の世界を変える時代に
──まずは、お二人のキャリアについてお聞かせください。
尾花:ベイカレントで4年間コンサルタントを経験した後、自分でも事業を起こして急成長させてみたいと考え、保険業界特化のSaaSを提供するhokanを起業しました。

尾花:hokanを離れた後はSansanに入社し、立ち上げ間もなかった「Contract One」の事業責任者に就任して現在に至ります。
藤田:私は西村あさひ法律事務所で18年弱、弁護士として企業間紛争を専門にしてきました。担当案件の多くは企業間の取引における争いでしたが、この場合、契約書の内容で勝敗がほぼ決まるのです。「この契約内容では勝ち目がない」「契約の締結前に文書の内容を精査していれば争いが起きなかったのに」というケースを数多く見てきました。

藤田:企業間紛争は予防が肝心だと痛感した一方、日本企業の大半を占める中小企業には法務に割く予算がないという現実も知りました。そのような環境でも予防ができないかと考えていたところ、自然言語処理のAIを知り「これで法務の世界が変わる」と実感したのです。変わるなら変える側に回りたいと思い、起業しました。
──Sansanが提供する「Contract One」についても簡単にご紹介をお願いします。
尾花:AI契約データベースです。契約書をすべてデータ化した上で、それらの親子関係を構造化したり、契約書の各項目を正確に抽出したりします。そのようにして精度の高いデータベースを構築し、あらゆるユーザーが必要な契約書の情報にたどり着いて正しく解釈できるよう支援するためのサービスです。
意外と進んでいない契約書の電子化
尾花:現在、日本企業の約7割が電子契約サービスを導入しています。ところが、紙の契約書と電子の契約書の割合を尋ねると「半分以上は紙」と回答する担当者が約7割を占めるのです。雇用契約書の一部は電子で、残りは紙というパターンも見られます。それではアナログ情報とデジタル情報がバラバラに存在することになり、紙のみのパターンよりも管理が難しくなります。
名刺と請求書のDXサービスを展開している当社の強みは、紙の情報をデータ化する技術です。Contract Oneでは契約書をデータ化し、契約同士の関係性を構造化することで、価値のあるデータベースの構築を実現します。
──リセが提供する「LeCHECK」についてもご紹介ください。
藤田:LeCHECKは、契約書の審査をAIで行うサービスです。通常、大企業が契約書を取り交わす際は弁護士や法務部員が内容を確認します。自社に不利な条項や抜け漏れがあれば指摘し、代替案を提示するためです。それらのノウハウは各弁護士やベテラン法務部員の頭の中に存在し、たとえ大きな法律事務所であってもすべては共有知化されていません。LeCHECKでは各分野の弁護士のノウハウを細かくデータ化し、AIに組み込んでシステム化しています。