世界との“競争”に参加できていない日本の現実
株式会社オルツ 取締役CFOの日置友輔氏が、AI分野で世界に遅れる日本の実態について講演。前編でご紹介したセッションは希望を持たせる内容で展開されてきたものの、本セッションでは危機感を持たせることが目的であると冒頭で語り、オルツが目指す世界レベルの競争について切実に訴えた。
まず、オルツがカンファレンスを開催したり新たなサービスを頻繁に発表したりしているのは、世界レベルでの“競争”で勝負しているが故の危機感があるからだという。
イノベーションを起こすためには、企業も資本市場も“競争”する必要があり、「世界と戦って勝つ」という視点を持ち続けなければならないと語る。日本が今後勝つためには、世界レベルでの競争に参加する必要があるが、一体どれだけ多くの日本人が競争できているかと懸念しているそうだ。
競争がなければイノベーションは生まれない。そして、競争のエネルギーとなるのが「エクイティ(株主資本)」で、資本市場はベンチャー企業が世界レベルの競争に参加できるようサポートしていかなければならないと日置氏は語る。
だが、現実には世界レベルの競争を考えていない投資家が多いと日置氏は懸念する。日置氏は、オルツに参画して以降210以上の国内外の投資家と面談してきたが、「計画数値・KPI」について聞かれることが多いことに物足りなさを感じていると話す。もちろんKPIは大事だが、それ以上に「“どこ”で“誰”と戦っているか」が重要なのだ。もちろんKPIも重要だが、その数値は目指す目標によって変化する。事業会社ももちろんだが、投資家も世界で戦う目線を持つ必要があり、日本発のイノベーションを起こすのであれば、その目標から逆算して考える必要があるという。
なお、AIによるイノベーションで切り離せないのが労働生産性だが、日本の労働生産性は欧米に負けている。そしてその責任は、ビジネスに参加している人間全員にあると日置氏は話す。DXの成果として重要なのは売上を上げながらコストを下げて利益を増やすことだが、日本の事業会社は単なる“分析”で終わってしまっていることに危機感を抱いているそうだ。
競争に参加するために重要なのは、まず仕事を「AIでできる仕事」と「人間が価値を発揮できる仕事」に分類すること。
オルツは、上場企業100社以上がアセスメントに参加している大規模言語モデルの「LHTM-2」を提供しており、音声認識のサービスやボイスボットのサービスも提供している。
「1人1つのデジタルクローン」を掲げている企業として、オルツは「AIでできる仕事」をAIに任せる力を持っているので、あとは日本企業がどれだけ早くスタートするかだと日置氏は話す。
「スタートして、競争の汗をかいて、PDCAを回さないと何も動きません。また、世の中の動きを傍観している暇もありません。立ち止まって分析するよりも速く革新は進んでいます。今日以降の歩幅を変えていかないと世界とは戦えません。このカンファレンスがそのきっかけとなればと思います」
日置氏はこのように語り、本セッションを締めた。