日本企業も早急にリマニュファクチャリング推進を
「『リマニュファクチャリング(以下、リマニ)』は経済安全保障政策と密接に連携しており、欧米では環境対策と経済安保の観点から取り組みが進んでいます。しかし、日本ではこの問題に関してほとんど報道されていません」
こう指摘するのは、EYでストラテジック インパクト リーダー パートナーを務める國分俊史氏だ。経済安全保障政策の専門家であり、政府や与党のアドバイザーとして政策の立案にも携わっている。同氏は、「日本企業も早急にリマニに取り組まなければ、将来的には非常に不利なポジションに置かれてしまいます」と危機感を露わにする。
リマニとは、使用済み製品を収集し、修理・再生して新品同様の品質で再生産するプロセスを指す。なぜ、これが経済安全保障の観点から重要なのか。背景にあるのは、欧米が進めるデリスキング政策[1]と、台湾有事リスクの高まりだ。
國分氏は、「米国では対中規制を国家安全保障上の課題として捉え、一定規模の中国市場を失うことを容認する合意が国内で形成された状況にあります。また、既に米国は、台湾有事が発生した場合の徹底的な対中制裁のメニューを検討しています。そして重要技術は、技術的優位性を最大限維持し続けるため、今後も規制化される方向性が確定しています」と説明する。
台湾有事が発生した場合には、日本本土の米軍基地も攻撃対象になる可能性が極めて高い。日本では、特に沖縄の米軍基地にフォーカスして報道される場合が多いが、米国は横田や横須賀、岩国、佐世保といった他の米軍基地もミサイル攻撃の対象となることを当然のこととして想定しているという。
國分氏は、「我々が考えなければいけないのは、本土の米軍基地が攻撃された場合でもサプライチェーンを止めないBCP(事業継続計画)です。たとえば、台湾有事を念頭に置いた在庫の積み上げは、すぐにでも実施しなければなりません」と語る。
[1]デリスキング政策:経済的なリスク回避を目的に、特定の外国企業・市場・供給源からの依存度を低減する政策