市民発のイノベーションで大事な、オーナーシップを生む「環境」と「共視するリーダー」

Re:public(リ・パブリック)田村大さん、内田友紀さん:インタビュー 後編

 都市のイノベーションのあり方を、研究し、実践するRe:public(リ・パブリック)の田村大さんと内田友紀さんに、都市におけるイノベーションの本質を聞く本連載。後編では、日本の都市と世界の都市をつなぐことで見えてきたもの、イノベーションに対する誤解や思い込みを乗り越え、イノベーションを都市に根付かせるには何が大事か。素朴な疑問を含め聞いてみた。

[公開日]

[語り手] 田村 大 内田 友紀 [取材・構成] 石川 伸明 [画] 永井 結子 [編] BizZine編集部

[タグ] 事業開発 社会・公共 都市 福岡 オーナーシップ スケールアウト型イノベーション

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異なる文化を持つ都市同士が、同じ課題に取り組むことの意味

――日本の都市と世界の都市をつなぐということでは、イノベーションスタジオ福岡はどんな取り組みをしてきたのでしょうか。

内田:
 海外との連携も手探りで行ってきました。「プロジェクト2」ではオランダから女性2人が参加しましたが、これはアムステルダム・メディアラボ(アムステルダム応用科学大学)と九州大学の学生を2人ずつ交換し、それぞれの国で並行してプロジェクトを走らせたためです。海外との連携を初めて試みたのはパイロットプロジェクト「障害のある子どものバウンダリーをリデザインする」で、このときはデンマークデザインセンター(DDC)と協力して福岡とコペンハーゲンで同じテーマのプロジェクトを進行しました。

――ちなみに、コペンハーゲンとの比較では、どんなことが見えてきたのでしょうか。

内田:
 デンマークではどのような個人も同じ生活を送れること、例えば障がい者も高齢者も、手厚い外部サービスにより一人で行動できて暮らせる状態が最善という考え方に触れました。一方、日本では、家庭内で協力し合ったり、福祉施設でも障がい者同士が助け合ったり、ときには立場が入れ替わってスタッフがサポートされていたり。ここでは、「個人の自立」という価値観ではくくり切れない課題解決へのアプローチが生み出され、育まれている。DDCのメンバーからは、「コペンハーゲンでは想像できない」と言われました。

 そこから見えてきたことは、「障がい者」と「健常者」という概念、タグを一度外して、新しいタグに付け替えることでした。障がい者と健常者の壁を取り払った新しい集団の考え方をつくるほうが、日本的であり、同時に「福祉先進国・デンマーク」をも驚かせる革新的なアプローチなのではないかという発見につながったんですね。

田村:
 文化的背景の違う都市と都市が人と人を通じてつながることで、元々の街のカルチャーを再評価する視点が生まれ、新しい発見につながる。そこが面白いと思うんですね。今後は、イノベーションスタジオ福岡から生まれたアイデアやビジネスが、コペンハーゲンやアムステルダムでも発表されて共感者が現れ、それぞれの都市で実施する主体が変わり、その都市の文脈で発展していく「スケールアウト型のイノベーション」の形を考えていきたいと思っています。

都市と都市間の比較による、アイデアやビジネスの発見©Yuiko Nagai

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