今回、川崎市産業振興財団の支援により、従業員数が20名に満たない企業であってもAIの共同研究を大学と行うことが出来ました。
■目的:若手歯科技工士育成の効率化と生産性の向上
セラミックスのクラウン(被せもの)の製作において、歯の色調の再現は形態の構築と並ぶ重要な要素となっています。
歯の色調を再現するためには、①歯科医院から送られてきた患者様の歯の画像を見て歯の正しい色を判別する、②色を調合し塗り重ねる、2つの段階が必要です。
技術・経験の少ない若手歯科技工士にとって第一段階である色の判別で、先に進めないことが多くあります。
これは、
●画像から正しい色調を読み取ることができない
⇒目が鍛えられていない若手は色が見えない。ベテランでも夕方に目が疲れて
くると微細な色の違いを読み取れないことがある。
●歯科医院で撮影された画像に正しい色が表現されない
⇒歯科医院の撮影環境やスタッフの撮影スキル、撮影機材が必ずしも理想的な
ものとはならないため、そもそもの画像に問題がある。ベテラン技工士は、
頭の中で色調を補正して判断している。
ことが要因です。
そのため、若手歯科技工士はベテラン歯科技工士に画像を見てもらい、色を教えてもらうことで、作業を先に進めています。
今回、AIで色を判別することで、若手の歯科技工士のサポートを速やかに行うことができ、育成の効率化が進み、色の指示のためにベテラン歯科技工士の作業中断が無くなり、生産性が向上することを目指しております。
■背景:若手歯科技工士の減少と歯科技工士の高齢化
歯科技工士の25歳未満の離職率は約79%(日本歯科技工士会推計)と言われ、
若手歯科技工士は若年層全体の人口減以上に減っております
厚生労働省の衛生行政報告例によると
29歳以下の歯科技工士数は平成14年の7,846人(全体の21.3%)から平成28年の4,041人(全体の11.7%)へと14年間で5割以上減少しています。
(主に歯科技工士の過酷な労働環境が原因ではないかと言われております。)
また、50歳以上の歯科技工士が占める割合は47.9%と高齢化が進んでいます。
【QLデンタルメーカー代表取締役 石原孝樹のコメント】
今回川崎市産業振興財団様の支援により、植木研究室と共同研究を開始できることになり、大変感謝しております。ベテラン歯科技工士の目の再現は生産性向上に大きく資するものです。川崎市には従業員数20名未満の「ものづくり企業」が数多くあり、今回のスキームのような形でAIの画像解析技術を取り入れることが出来れば、多くの中小企業の助けになると思います。
【QLデンタルメーカー取締役 滝田大地(本共同研究の当社側責任者)のコメント】
任意のカメラによる画像から処理前の真の色を導き出すのは極めて難しい内容であり、光学系の技術で対応するには工業用の装置等を用いる必要があり、歯科医院での使用を考えると現実的には解決が不可能に近い問題でした。
今回のディープラーニングによる色の判別は、撮影環境を選ばないものであり、実用化できることになれば、大変価値あるものになると考えております。
■明星大学植木研究室について
明星大学 情報学部 情報学科の植木一也准教授が率いる研究室。画像・映像を中心としたマルチメディア認識技術の研究課題に取り組んでいる。
早稲田大学理工学術院の小林哲則研究室と小川哲司研究室との共同研究プロジェクトが、米国国立標準技術研究所(NIST)主催の2017年国際競争型映像検索・評価ベンチマークTRECVIDのAd-hoc Video Search(AVS)タスクにおいて、世界1位の検索精度を達成している。
■QLデンタルメーカー株式会社について
『メタルフリーの自費診療を通じて、患者様・歯科医院・歯科技工士の3者が幸せになる仕組みを提供する』をミッションとして2014年に設立。
自費率(自由診療対象の技工物)100%で金属材料を一切使用せずセラミックスの詰め物・かぶせ物だけを製作する稀有な歯科技工所。
QLデンタルメーカー株式会社