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川邊健太郎氏と安宅和人氏が語るAI時代の生存戦略──奪われない価値は「主語」と「一回性」に宿る

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 生成AIの劇的な進化によって、あらゆるビジネスパーソンが自らの存在価値を問い直される時代が到来している。効率化が進み、従来「仕事ができる」とされてきたスキルの多くが平準化される中、人間があえて担うべき領域とは何だろうか。今回は、SusHi Tech Tokyo 2026より、セッション「AIが奪うもの・奪えないもの─そして、余白から始まる人間の再創造」の模様をレポートする。長年インターネット産業を牽引し、新たにAI産業への挑戦を掲げるLINEヤフー 代表取締役会長の川邊健太郎氏と、“知の巨人”としてデータサイエンスや社会デザインをリードする慶應義塾大学教授/LINEヤフー シニアストラテジストの安宅和人氏が登壇。モデレーターを務めるメディアジーン 代表取締役 CEOの今田素子氏とともに、AIとの共存社会における人間の価値と、生み出された「時間の余白」の投資戦略について議論を展開した。

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日本で劇的なレイオフは起きない。川邊氏が描くAI起業の未来

今田素子氏(以下、今田):本日は「スーパー経営者」の川邊さんと、「知の巨人」の安宅さんに、AI時代における人間の価値や働き方についてお話を伺っていきます。まず川邊さんにお聞きしたいのですが、現在米国では多くのテック企業がレイオフを行い、人員削減を進めています。経営者の視点から見て、今後日本でも同様の動きが起こるのでしょうか。また、そのためにどのような準備が必要だとお考えですか。

川邊健太郎氏(以下、川邊):結論から言うと、日本で米国のような劇的なレイオフは起こらないと考えています。法的な制約もありますし、企業としてはレイオフではなく「採用を控える」という動きがメインになるでしょう。

今田:採用が控えられるとなると、新卒の学生たちが職を得られなくなってしまうのか、あるいはまったく違うキャリアパスを選ぶことになるのでしょうか。

川邊:日本の場合は構造的に慢性的な人手不足社会ですから、仕事を選ばなければ職に就けないということはあり得ません。就職自体はいくらでもできるはずです。ただ、重要なのはAIの進化によって「個人で完結できること」の幅が圧倒的に広がるという点です。そのため、従来の企業に就職するのではなく、ツールとしてのAIをフル活用して自身でスタートアップを起業する人がかなり増える気がしています。ちなみに私自身はインターネット一筋30年でやってまいりましたが、退任を予定しています。ネット産業からは一度きれいに足を洗い、次はAI産業で一からアンラーニングしてやり直したいと思っております。

LINEヤフー株式会社 代表取締役会長 川邊健太郎氏
LINEヤフー株式会社 代表取締役会長 川邊健太郎氏

人間の仕事は「ディレクション」と「ダメ出し」へ集約される

今田:安宅さんにお伺いします。企業が採用を控えたり業務がAI化されたりすると、若い人たちが組織の中で「経験やプロセスを学ぶ機会」が失われていく懸念があります。そのような状況下で、これからの世代にはどのような教育をしていくべきでしょうか。

安宅和人氏(以下、安宅):新卒採用自体は人手不足の背景から続くと思いますが、問題は中間層の仕事のあり方です。今後サイバー空間に閉じた領域で起きるのは、人間による「ディレクション」と「ダメ出し」のプロセスへの集約です。基本的には、適切なディレクションや的確なダメ出しができる人間でなければ、あまり価値を生めなくなります。データやAIは強力ですが、あくまでツールです。何らかの領域について徹底してハンズオンで深く関わり、おもしろいインサイトを持っている人が求められます。対象を生々しく理解しており、自分なりに深く考え、感じてきた絶対量が多い人材こそが重要になってくるのです。

今田:プロセスを経験している人ほどAI活用のレバレッジが効く一方で、経験のない人がAIのアウトプットの「正しさ」をどう判断するのかは大きな疑問です。

安宅:アウトプットの「正しさ」という点について言えば、普通にAIを使えば概ね正しいものは出てきます。人間と同程度の誤差に落ち着くため、「正しいか正しくないか」よりも「より良いものを作りたいという強い意志があるか」の方がはるかに重要です。たとえば料理人が、出てきた料理に対して「これでも正しいけれど、何かいけていない」と感じて、絶妙な加減で塩や山椒をひと振りして味を決める。そのようなセンスや判断力のことです。それは実際の現場やユーザーとしての生々しい視点がないと絶対にわかりません。スーパーユーザーやアルティメットユーザーと呼ばれるような、極めて深い感覚を持つ人の価値が高まるはずです。

川邊:エンジニアの間でも、プロセスを学んでいない世代がどう正しさを担保するのかはすでに議論になっています。安宅さんの言う「体験させずに感覚を研ぎ澄ます」というのは少し先の未来としてはあり得ますが、直近の過渡期においては、責任を担保するためにも企業や学校が基礎プロセスを体験させる必要があります。企業は利益追求の観点から基礎教育のコストを削る傾向にあるため、今後は一時的に「学校教育の場で基礎的なプログラミングやプロセスをしっかり教え込んでほしい」という要望が高まる役割分担の時期が来るのではないでしょうか。

安宅:私も政策論文の審査などに関わりましたが、LLMに丸投げされた文章は「自分で苦しんで書いた経験がない」ことが透けて見えてしまいます。一通り修羅場をくぐり、苦しんだ経験がない人がAIを使うと、ツールに振り回されて中身がスカスカになってしまう。プロンプトを入力しただけで、あとの責任をAI任せにするようでは、おもしろいものは生まれません。求められる付加価値のハードルは確実に上がっています。

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慶應義塾大学 環境情報学部 教授/LINEヤフー株式会社 シニアストラテジスト 安宅和人氏

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AIに奪われない人間の価値は? 安宅和人が明かす「2つの軸」 

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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