東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)は、DX推進に向けたデジタル人材育成の経過と今後の展開を発表した。
デジタル人材育成の全体像
JR東日本では、様々な業務革新や新たな価値創造に向け、全社的なDXリテラシー向上に取り組んできたという。2019年までに全社員が順次タブレット端末を持ち、搭載されているアプリを活用して、業務課題解決に社員が取り組めるような環境を整えてきたとしている。これにより、すでに現場第一線の多くの社員がデジタル技術を活用して、様々な業務改善などに取り組んでいるという。
今後、この環境を活用してDXを加速するため、2027年度末までに、デジタルツールでデータ処理や業務資料作成などができる「ベーシック」人材を約25,000人、デジタル技術で業務課題解決を行う「ミドル」人材を約5,000人、そしてDX戦略を策定・実施し、業務を俯瞰し抜本的に変革する「エキスパート」人材を約200人育成していくと述べている。
全社員を対象に多様なデジタル人材の育成を進めることにより、様々な業務革新や新たな価値創造に繋げるとともに、約2,000人超のデジタル推進委員に登録(デジタル庁の任命をもって登録)している社員などの取り組みを含め、デジタル技術を活用した地域との連携を深度化させていくとしている。
「DXプロ」の新規配置
各職場におけるデジタル人材の育成やDX推進風土醸成に取り組む「DXプロ」を2023年年11月1日より新たに配置。DXプロは、「ミドル」「ベーシック」などの社員に対してデジタル技術利活用促進のための教育をハンズオン形式で行うという。社員のDXリテラシー向上により、デジタル技術を活用した顧客サービス向上、業務改善を加速させていくと述べている。
また、担当業務経験の異なるDXプロが相互連携することにより、DXリテラシー向上に関する情報やベストプラクティスの共有を行うとともに、異なる視点や専門知識の相互補完により、デジタル技術を活用した新たな課題解決手法の創造などを促進していくという。
主な役割
- デジタル知識・スキル向上とDX推進風土醸成
- DXリテラシー勉強会講師
- デジタル業務改善推進に関する社内連携
- デジタル業務改善好事例の水平展開支援
- デジタル技術を活用した地域連携支援
配属日:2023年11月1日
- 2023年11月はDXプロに対する研修などを実施
- 本格的な活動を12月より開始
体制:41名(2023年12月1日時点)
「システム人財育成プログラム(愛称:JEIS大学)」のグループ全体への拡大
2023年1月から、システムに関する知識を習得した上で、システムの仕様や機能を決められる「業務とシステムの両方がわかる」人材を育成するプログラムを開始しているという。
このプログラムでは、社内公募により選抜された社員(第一期は19名)が情報システムのグループ会社であるJR東日本情報システム(JEIS)に出向し、2年間程度システムの開発や運営の実務を通じて知識を習得していくという。
なお、2023年度の第二期以降は、JR東日本グループ全体に公募の範囲を広げ継続して実施していく計画だとしている。
「DICe」におけるデータ利活用やシステム開発の推進
JR東日本グループでは、「データ・AI利活用」「システムやアプリのスピード感ある開発・実装・改善」について取り組んできたという。昨今のデジタル技術の急速な発達を受け、アジャイル開発などの推進や、生成AIに代表されるようなガバナンスの問題への対応などが急務となっている。
これらの取り組みをより拡大し、加速させるため本社内に新たな組織「DICe」を2023年10月1日に設置。DICeにおいて実施するシステムやアプリの内製化開発の推進により、JR東日本グループにおける高度デジタル人材の育成を進めていくという。
体制:40名(2023年12月1日現在)
- JR東日本イノベーション戦略本部、研究開発センターおよびJEISのITスキルを持った社員で構成
主な業務内容
- データやAIなどに関するガバナンスの策定・運営
- データの利活用支援
- 社内ニーズに応じたアジャイル開発
取り組み事例
JR東日本グループにおける生成AIの適切な利活用を推進するために、「JR東日本グループ生成AI利活用ガイドライン」を11月に策定。また、JR東日本社内向けに生成AIを活用したチャットシステム「JRE AI Chat」を構築し、10月より試用を開始している。