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コンセント長谷川氏が語るサービスデザインの本質

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6月30日、株式会社翔泳社主催のセミナーBusiness Book Academiy(協賛:日立製作所)にて、株式会社コンセントの代表取締役/インフォメーションアーキテクト 長谷川敦士氏と取締役/サービスデザイナー 大崎優氏を講師として招いた「顧客体験に基づいた事業設計『サービスデザイン』」が開催された。本記事では、長谷川氏による第一部「新しい事業モデル構築のためのサービスデザイン」の内容を紹介する。長谷川氏はサービスデザインの歴史を概観した上で、効果的なサービスデザインを展開していくための思考のコツや自社で行う最新のデザインリサーチ手法を、事例を用いて解説した。

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サービスデザインの現在

情報環境や技術動向の変化がめまぐるしい現代。かつては価値提供できていたビジネスモデルが機能不全を起こし、バリュープロポジションを見失うケースも多々見受けられる。

テクノロジーデバイスを存分に活用した新世代ハイヤーサービス「Uber」はタクシー業界のみならず自動車業界にも強い影響を持ち始めている。便利すぎる交通手段は、自動車の保持の必要性を揺るがしているのだ。同じように、宿泊サービス「Airbnb」は今や世界最大のホテルの顧客数を上回った。 このように市場環境においては、あらゆる既存のサービスや事業体が「顧客にとっての価値とは何なのか?」という問いを一層強く突きつけられている。

タイトル長谷川 敦士氏 株式会社コンセント 代表取締役/インフォメーションアーキテクト

60年代から90年代までは、いかに流通、販売網をつくっていくか、という時代だった。90年代後半には、流通網はほぼ網羅され、そこから2010年ぐらいまでは、情報、広告の時代。マス戦略が攻勢を示し、顧客にいかに買ってもらうか、あるいは、顧客は誰もが知っているブランドを買う、というような時代だった。

今、まさに、マスのコミュニケーションも通用しなくなっている。顧客は、自分ならではの生活にそくした購買行動を起こし、ライフスタイルを送っています。(長谷川氏)

かの有名なマーケティング学者のレビットは1968年に「顧客はドリルが欲しいのではなく、ネジの穴が欲しいのだ」と言った。私たちは、ネジの穴を開けるためにドリルを使わなければいけないからドリルを買うのであって、別にドリル自体を欲しがっているわけではないのだ。40年以上前のこの言葉は、今、まさに反復される。

顧客の価値・姿をどう捉えるかに重きを置いた上で、ビジネスが継続されるデザインを行う、このような考え方がサービスデザインの本質と言えるものだ、と長谷川氏は言う。

顧客に寄り添うための二つの視点

顧客視点

長谷川氏も日本語版の監修に参加した、サービスデザインの入門書とも言うべき『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics - Tools - Cases ー 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計』(ビー・エヌ・エヌ新社)で紹介されているサービスデザインの鍵となる考え方は五つだ。

  1. ユーザー中心 ~サービスはユーザーの目を通して体験されるものである~
  2. 共創 ~すべてのステークホルダーがプロセスに関わる~
  3. インタラクションの連続性 ~サービスは相互に関係する活動の連続として設計する~
  4. 物的証拠 ~無形なサービスを物理的な人工物によって可視化する~
  5. 全体的な視点 ~サービスの環境全体をよく考慮する~

この五つがサービスデザイン思考の基本五原則と呼ばれる。 顧客や周囲の人の観点を取り入れ、全体的な思考を持って事業を捉えていく、というのがサービスデザインの中心的な思考であり、その営みはヒューマンセンタードデザイン(人間中心設計)とも呼ばれる。

このような思考を事業に導入していくときにどういうポイントがあるかについて長谷川氏による具体的な事例を用いた紹介が続く。「事業開発」においては、顧客視点で重要になってくるポイントが大きく二つある、という。

一つは顧客の価値観です。何を嬉しいと思うのか、どこに重きを置くのか、どういう判断をそこでしているのか、このような価値観を知ることで、サービスのプロポジション、キーコンセプトが見えてくる。もう一つは、顧客の行動文脈です。そのサービスを受けたときにその周辺を含めて、顧客というものはどのような行動をとっているか、サービスを体験している瞬間だけにフォーカスするのではなく、連続的な顧客行動を捉えるのです。(長谷川氏)

以上二点は似ているようで異なる。前者は顧客の静的な価値観に照らし、後者は動的な流れの中での文脈性やカスタマージャーニーという動的な価値行動に焦点が当たっている。この二点がサービス開発の肝となるのだ。 では、具体的にそれぞれはいかに導出していくのだろうか。長谷川氏からは実際にサービス開発の際に行われるコンセントの方法論が紹介された。

顧客の価値観の全体像を把握し、サービスの可能性を見出す

まず、顧客の価値観を導出するのは、エスノグラフィー(民族誌学)調査だ。聞きなれない言葉かもしれないが、元々は文化人類学の調査手法で、原理的な価値体系に依拠して、異なる文化の価値(善悪)を判断するのではなく、その文化のありのままを受け入れる、という態度をとり、生態のありのままを記述していく調査手法だ。

また、ここにはひとつテクニックがあるという。それは調査対象の選定において、一般的な層の人だけでなく、極端なことをしている人(エクストリームユーザー)を抽出してインタビューをしていくことにある。

エクストリームな人の行動に潜む価値観を見ていくと、実際にこれからの新しいサービスを考えていく上で、数年後の未来の世の中で起こりうるであろう物事やその時には一般的になっているかもしれない価値観の片鱗を見つけ出すことができます。(長谷川氏)

エクストリームユーザーエクストリームユーザー

こうして実際に顧客の自宅を訪問し、サービスを活用している場面を観察したり、インタビューを行うことで、さまざまな価値観の切片を引き出していき、のちにそれらを統合・構造化することによって、価値観の全体像を把握することを目指す。

エスノグラフィー調整を行うことによって、自分たちがどの価値をすでに提供できていて、どの価値に気づいていなかったかを見出すことができ、この価値についてさらに打ち手を打っていこう、と次の方針を立てていくことができるのです。(長谷川氏)

もう一方、「顧客の行動文脈」である動的な価値観を導出するために活用されるのは「カスタマージャーニー」だ。

購買行動を含めた文脈全体を捉えてデザインする

顧客の動的な価値行動を考慮するのがカスタマージャーニーと呼ばれるものだ。一般的に顧客の購買体験は、認知して、買って、使用して、アフターケアがあって、という一連の体験というように解釈されがちだ。カスタマージャーニーはそうした観点そのものを問い直す。

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