大日本印刷(以下、DNP)は、デジタル庁の「令和4年度補正 Trusted Webの実現に向けたユースケース実証事業」に参加し、「共助アプリにおけるプラットフォームを超えたユーザートラストの共有」をテーマとして、2023年6月~2024年3月に実証実験を行った。
DNPは2022年度から2年連続で同実証事業に採択され、今回は、2022年度に検討した情報の真正性を第三者に対して証明する技術の仕様に基づくプロトタイプシステムを開発した。このシステムは、ネットワークで流通するデータの信頼性を保証する仕組みであり、生活者同士が助け合って社会課題を解決する複数の「共助アプリ」を通じて、その社会実装の可能性を検証したという。
その結果、インターネット上の新たな信頼の枠組み(トラストフレームワーク)を構築するイニシアティブであるTrusted Webを社会実装するには、運用しやすい技術に加え、国際間の相互運用やコンソーシアム運営の際の要件などをルールとして定めたガバナンスが必要であることがわかったとのこと。また、同実証実験を通じて、「共助」などの幅広いテーマで汎用的に活用できるトラストフレームワークを策定したとしている。
実証実験の主な結果は以下のとおり。
共助アプリにおけるデジタル証明書の有用性を確認
分散型ID技術のデジタル証明書(VC)を使用し、共助アプリ利用者のプロフィールや利用実績などをデジタル証明書として保管する「Digital Identity Wallet」(以下、DIW)のプロトタイプを開発。DIWを使用して、複数の共助アプリで共通して使えるデジタル証明書を利用者に発行し、共助の実績を連動させる仕組みを実現したという。
また、複数の企業が参画する場合を想定し、VCのデータフォーマットとして構造や検証の仕組みがシンプルなSD-JWTを採用。これにより、台湾との国際的な相互運用テストが実現するなど、将来の運用を見据えた技術仕様を策定する重要性が明確になったとしている。
共助の信頼性を実現する「共助トラストフレームワーク」を策定
共助アプリの社会実装を想定し、デジタル証明書の発行者の要件定義やデジタル証明書の検証に関する運用や組織体制などのルールを定めた共助トラストフレームワークを策定。策定に当たっては、相互運用可能で信頼性が高いデジタルIDのガイダンス開発を目指す非営利団体「Open Identity Exchange(OIX)」が研究するトラストフレームワークを参照しているという。
今回策定した共助トラストフレームワークは、他のテーマにも応用できるようシンプルで汎用性の高い設計にしているとのこと。実証実験を通じて、Trusted Webの社会実装に向けたルールづくりの必要性が明確になり、その際に民間と各国・地域の政府などが果たす役割の重要性がわかったとしている。
DNPは今後、政府・自治体や民間企業・研究機関などとともに、同実証事業をはじめとした様々な取り組みを推進。デジタル証明書を流通できるDIWの社会実装を目指して、安全なネットワークの構築と、データの管理ルールの標準化に取り組んでいくという。