「レゾナックの登場を機に、日本の会社の経営が変わった」を目指す背景
宮森千嘉子氏(以下、宮森):「化学の力で社会を変える」という御社のパーパスや、「共創型人材の育成」を掲げる人材戦略には非常に感銘を受けています。CEOメッセージで、髙橋さんが「レゾナックが社会を変え、日本的経営を変える」と宣言されているのも驚きました。そのような想いを抱くようになった背景を教えていただけますか?
髙橋秀仁氏(以下、髙橋):私は元々銀行員で、海外勤務が長かったんです。最初はシンガポールで、当時進出していた日本企業に資金を貸し出していました。その頃、日本の製造業とその技術は東南アジアの人たちからも尊敬されていて、自分も誇らしかったですね。
しかし、バブル崩壊後の1998年頃は米国にいて、日本企業がバブル期に買った会社を売却する仕事をしました。銀行としてはお金を回収したいのですが、M&Aは買うよりも売る方が難しい。そんな中で、「技術や研究開発に優れる日本企業が、どうしてこんな買収をしてしまったのか」と痛感しました。日本の技術は素晴らしいのに、経営には課題があると感じ、帰国後は日本の製造業の内側から強くしたいと考えました。
ただ、2001年当時、39歳の元銀行員を日本の製造業が雇う風潮はなく、悩んでいたところに日本ゼネラルエレクトリック(以下、GE)から声がかかったのです。それならGEのポートフォリオ戦略を学ぼうと考えましたが、実際に入社して一番衝撃を受けたのはHRでした。日本の人事とはまったく異なる考え方で、その経験が原体験となり、日本版の新しい文化を作りたいと考えるようになりました。
宮森:私も近い時期にGEで働いていたことがありますが、すばらしいHR戦略をもっていましたね。また、「バリュー」が全社に浸透していたため、同じ価値観を共有するチームが一丸となって何かを達成したときの喜びは大きいですよね。
髙橋:そうですね。あの喜びを日本企業の人たちにも味わってほしいと思ったことが、僕のモチベーションになりました。