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新規事業に確実な成功を求めてしまう「本業の汚染」とは? 新規事業家の守屋実氏に訊く

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 新規事業は知見と経験の蓄積のために失敗することも重要だと言われますが、一方で確実な成功を求められる場合もあり、現場は板挟みとなって疲弊していきます。ラクスルの創業などに携わり、数々の新規事業に関わってきた守屋実氏は、その原因を本業の物差しを新規事業に適用してしまう「本業の汚染」にあると指摘します。MIMIGURIの小田裕和氏の新著『アイデアが実り続ける「場」のデザイン』から、守屋氏に「本業の汚染」について尋ねた対談パートを抜粋して紹介します。

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 本記事は『アイデアが実り続ける「場」のデザイン 新規事業が生まれる組織をつくる6つのアプローチ』の「第1章 組織の土壌を悪化させる新規事業」から抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

「やればやるほど疲弊していく」──新規事業の「土」を汚染するもの

小田裕和(以下、「小」) これまで、いろいろな新規事業のコンサルティングをさせていただいてきたのですが、「新規事業を生み出そうとすればするほど疲弊していってしまう」という状況があるなと感じています。

 その原因は、短期的に実りを得ようとする姿勢にあるのではないかと。土づくりにたとえると、いわゆる収穫を得るために、化学肥料をどんどん投入していき、結果、土が痩せこけていってしまう。人が辞めていったり、体調を崩したり、というケースも見聞きします。

 新しい事業をつくるとは、前向きでチャレンジングな活動なのにもかかわらず、どんどん土が死んでいく。これはやっぱりちょっと違うよな、と感じているところがあるんですよね。

 守屋さんはこれまで、数々の新規事業を立ち上げてこられたわけですよね。

守屋実(以下、「守」) 僕は、「新規事業家」と名乗らせてもらっています。これまでの経歴で言うと、19歳のときに大学の先輩がつくった会社に混ぜてもらったことを皮切りに、それから30年以上、新規事業一筋でやってきたんですが、その経験を1行のキャッチコピーにすると、下掲の図表の算数になります。

図表 これまで手がけた新規事業
図表 これまで手がけた新規事業

 「54」は年齢です。「17」は社内起業の数。ミスミという会社に就職し、10年間、新規事業にアサインされ続けました。そののちにミスミ創業社長の田口弘さんとエムアウトという新規事業の専門会社をつくることになるのですが、そこでさらに10年、新規事業の立ち上げに邁進することになりました。結果、会社員として勤めた20年間で17回連続、新規事業の辞令だけが下り続けたのです。

 これは結構ユニークだと思うんですよね。もちろん、自分で自分に辞令を出すことはできないので、自分でつくり上げた経歴というよりは、田口さんが根気強く人事発令してくれた結果なのですが。そして、20年17回の新規事業に取り組んだのちのある日、田口さんから「そろそろ独立したらどうか」と言われたんです。独立することは全く考えていなかったのですが、田口さんがそう言うのであれば、それが正しいのだろうと思い、100日後に会社をつくって独立することにしました。

 これまで新規事業しかやってこなかったので、「新規事業屋さん」をすることにしました。それでいろんなスタートアップに順繰り参画させてもらって、全部足し合わせると、累計で「22」社になるわけです。あとは週末起業として、東京の板橋区に病院を建てたり、フィリピンに小学校を建てたり、というのに関わらせてもらいました。それが合計「15」件。結果、「17」と「22」と「15」を足すと「54」、というわけです。

2回失敗したら、3回成功すればいい

 守屋さんはバブルの頃に大学生で、いろいろなイベントを開いたりしていたのが、最初の起業のきっかけだったそうですね。

 バブル時代に会社をつくったというのは、いい経験だったなと思っているんです。まず、資本主義社会において何か事をなそうと思ったら、株式会社でもNPOでもいいのでまず法人格を持って活動すると、かなりいろんなことができるんだ、ということを原体験として得られたんですね。

 バブル絶頂期だった当時は、山手線の内側の土地代でアメリカ全土が買えるとか、世界で作られているロールスロイスの3台に1台が日本で買われているとか言われていたわけです。訳の分からない話ですよね。でもそういう時代だったから、2回連続失敗したら3回連続成功すればいいと思っていたんです。僕だけじゃなくて、おそらく全国民が。

 それが、「思いついたらやる」ということに対して、著しくハードルを下げていたんです。実際、多少の失敗であれば、そのあとどうにかなりましたしね。とにかく、やりたいことがあったら法人格をつくってやる、うまくいかなくても大丈夫、やってやってやりまくれば、いつの日かうまくいく、という感覚がその頃に身についたのです。

 僕らの世代は、そういう人もいなくはないですが、できないと思ってしまっているというか、自分で制約をかけちゃう人が多いのかなと。守屋さんの著書で、「起業とはおのれが走ることだ」と書かれていて、「まさに!」と思いました。

 当時、日本人が全員走っていたら暴走しちゃって、だからバブルがはじけたんですけどね(笑)。

 確かに(笑)。守屋さんはそういうバブルの状況に甘んじず、自分で行動して自分でビジネスの仕組みをつくっていったわけですよね。

新規事業の成功を阻む「本業の汚染」

 自分で覚悟を持って試行錯誤して事業をつくっていくというのは、スタートアップだと当たり前だと思うんですが、大企業の新規事業になるとそれが難しい。その原因としては、守屋さんが著書『新規事業を必ず生み出す経営』(日本経営合理化協会出版局)で書かれている「本業の汚染」が大きいんじゃないかと。

 では、なぜ本業の汚染が起きてしまうのでしょうか。大企業の社長や経営層も、汚染させたいと思って汚染させているわけではないですよね。

 全く悪気なく、そもそも汚染していることに気づいていないんじゃないですかね。大企業ってなぜ大企業なのかと言うと、強靭な本業があるからだと思うんですよ。

 例えば、我が国で一番大きい会社ってトヨタですよね。トヨタには、車を作って売るという本業があります。まさか本業がないのにトヨタのようなガタイの会社になるわけがないですよね。

 そしてそれだけの巨大企業として世界で勝ち続けるためには、頭のてっぺんからつま先まで「車を作って売るという本業の仕様」になっている必要がある。トヨタに入社する人で、「まさか、我が社は車を作って売る会社だったのか!」と驚く人なんて一人もいないと思うのです。

 例えば、レクサスの工場に配属された人は、「俺はレクサスを作るのである」と分かっている。エンジンを組み付けるという仕事にアサインされた人は、昨日も今日も明日もエンジンを組み付けることに疑問を持たないでしょう。

 そしてそこには100%以上の完成度のマニュアルがある。例えば、エンジンのボルト1本を締めるのにも専用の工具があり、そのボルトをどのくらいの圧力で閉じたのかが自動で記録されるとか、あらゆることが完璧に整っているんです。となると、「俺、レクサスはこんな感じがいいと思うんだよね」と言って工夫するとか、「いや、車じゃなくてもいいんじゃないの?」と言って何か始めるとか、あり得ないじゃないですか。

 だから、ずっと本業仕様で来た人は、「どのインダストリーに向き合うのか、どの顧客に何の価値を出して、それをどれくらいのプライシングにするのか、それを作り上げるためにどんな人材を採用すべきか、そのための資金はどれくらいで、それをどこから調達するのか」というような経営に関する一切合切を考える、しかも成し得るまでやり切る、ということをやらないと思うんですよね。そんなことを考えずに、誠実に業務を遂行する「本業最適」な人になるべきなのです。

 仮に、新規事業が全く本業と同じだったら「本業最適=新規事業最適」になるのですが、本業と新規事業がイコールではないという時点で、「本業最適=新規事業不適」なのです。

 だから結果として、それは本業の汚染と言わざるを得ない。

「1分の1」の成功を求めてしまう

 例えば、その会社のプロパーで、本業で成り上がって社長になったとするじゃないですか。社長になるまで40年かかったとして、自分の社長任期が5年だったとしたら、全く初めての新規事業をやりますかね? 「何の得があるの?」という話になってしまうと思うんですよね。

 だから、たいていやらないんじゃないですかね。少なくとも、本気ではやらない。あくまでも本業の方が優先。5年の任期を無事に渡りきることの方がよっぽど大事。それが世の中の現実だと思います。

 「我が社の第二の柱を」といった言葉がIR上に載っていたりしますが、多くの場合はスローガン止まりだと思うんです。その言葉に偽りがないなら、アイデアを社員から集めるイベントを開くとか、そのイベントを外部の業者に丸投げするとか、そんなことはしないで、社長自ら、少なくとも取締役が自ら、それこそ進退を賭けて一意専心、事業に向き合うべきだと思うのです。第二の創業なのですから、それくらいのパワーを突っ込むことは、ごく自然なはずですよね。

 でも、自分の身の安全を考えたら、やっぱり「今期の本業の業績」を優先してしまうと思うんです。そういう環境でやっていると、本業の汚染を回避しなければいけないと分かっていても、どんどん時間が過ぎてしまうんじゃないですかね。

 よく弊社MIMIGURI代表の安斎勇樹が、「こだわりとはとらわれの裏返しである」という話をしているんです。日本人は、「こだわる」ことを美徳としているところがありますよね。こだわりを大切にしていった結果、ちょっと変えるなんてことをしたら罵声が飛んでくる、という状況になってしまっている。

 今の大企業も、最初は新規事業だったわけですよね。それを大切にして大きく育てて、素晴らしい価値にしてきた。だからこそ日本にはいろんなものが溢れているし、僕らも今みたいな生活が当たり前にできている。その前提がある一方で、その価値がある種の「とらわれ」になってしまっていて、変わることに対する恐れがあるのかもしれません。

 新規事業は、「十中八九うまくいかない」と言われますよね。人によっては、「千三つ」と言う人もいる。十中八九ということは、「10回やって8回か9回はうまくいかない」のに、指示としては「今期中に1分の1で必ず成功させろ」となってしまう。

 ここにまた、本業の感覚が混じっていると思うんですよね。例えば、トヨタのレクサスの例でいくと、「10台作っても8台か9台はうまく走らないかもしれない」ってあり得ないじゃないですか。1万台のうち1万台全部ちゃんと走らないと困る。

 その感覚が身についているからこそ、「絶対に失敗するな」という指示になってしまう。

 本業と新規事業はイコールではないので、本業の経営計画と新規事業の経営計画は、違って当たり前なんですよ。なぜなら、等号で結ばれていないから。

 この不等式って、小学校で習ったはずなんですよ。でもこれが、頭から飛んじゃうんですよね。だから99%くらいの確率で、みんなで同じような間違いをするんだと思うんです。

 これまで日本人は、インフラや安全性などにおいて非常に高いクオリティを享受してきましたが、人口が減っていく中で、これまで通りではもう成り立たないですよね。

 世の中に適応するためには、何かを捨てないといけないけれど、それがなかなかできない。「こんまりメソッド」で、何かを捨て去る覚悟を持つ必要があるのかもしれませんね。

 歴史上類を見ない、昭和の成功の後遺症ではないかと思いますね。

答えは、自分でつくっていくもの

 新規事業をつくろうとしている人たちって、みんな「アイデアの出し方」を聞いてくるんですよね。でも守屋さんは、例えば動物病院向けのビジネスを立ち上げるとき、動物病院に1週間泊まり込みでバイトをされていました。自分の顧客理解が浅かったと分かって、バイトをしてみたら、「これは自分がなんとかしなきゃいけない」と気づき、そこから見える景色が一変していったと。「アイデアの出し方」の前に、まずこの部分が大事ですよね。

 みんな、答えのあるテスト問題だと思っているんじゃないですかね。そうじゃなくて、答えはつくっていくものなのです。だから「創業」。「業を創る」なのです。

 一方、本業では、答えがあるんですよね。長年蓄積してきた経験の積み上げの中に。だから、本業の感覚を引きずっていると、「答えを教えてください」となる。「早めに、確実な答えを教えてください」と。

 でも、「いやいや、あなたが創業者なんだから、あなた自身が答えをつくっていくべきですよね」という話なんです。実際、僕もそうでしたしね。「自らごと」として立ち向かっていなかったから、全然ダメで、2回も空振りしちゃったんです。

 小田さんは「土」と表現されていますが、僕はよく「根っこ」だと言っているんです。根っこが腐っていると、何も育たないですよと。少なくとも僕が2回失敗したときは、自分の根っこが腐っていたと思っています。

 その熱量って、生まれやすい環境と生まれにくい環境があるのか、それとも個人の問題なのか、どうなんでしょう?

 僕は、熱量は勝手に湧き上がるものだと思っているんです。人は人に影響を受けることが多いので、人から影響されて熱量が湧き上がってくる。例えば、隣でバンバン燃えている人がいたら、その火が自分に燃え移ってくると思うんですよね。よっぽど自分が湿っていたら、火がつかないでしょうけど。

 自分自身でゼロから100パーセント自家発電をする必要はないんです。誰もがリーダーシップを発揮しなければいけないなんてことはない。何かをやりたいと燃えている人がいたら、その人について行ってもいいんじゃないかと思うんです。フォロワーシップってすごく重要で、リーダーが誰の力も借りずに一人だけで何かを成し遂げるなんてことは、無理だと思うんです。

 そうやってリーダーについて行ってフォロワーシップを発揮していくうちに、「俺はやっぱりこっちをやりたい」と、勝手にリーダーシップに火がつくかもしれないですしね。

 ちなみに動物病院に1週間泊まり込んだときの僕の話で言うと、顧客の現場で「顧客の不」のシーンに遭遇したことが僕の原体験になって、それが1週間のうちに何度も重なり、最後の日にはすっかり炎が燃え上がっていた、という感じでした。

主語は「事業」か「本業」か「自分」か

 人と出会うことで自分の熱量が生まれていくってものすごく大事ですよね。ただ、一方的にお客さんを知ろう知ろうとして、自分は何も変わらない、というケースも多いじゃないですか。

 顧客の〝データ〞を「とりあえず」とろうとしたり。顧客を知るために「調査会社に丸投げする」とか。みんなやっていることですが、そういうことをやっている限りは「自らごと」にはならないんじゃないですかね。

 ある意味、お客さんのことを知ろうとするのは、それによって自分が変わっていくとか、自分のアイデンティティに揺らぎが起きるということだと思うんですよね。

 実際、守屋さんも2回失敗して、毎回いろいろ言われて、「変わりたい」と思ったんでしょうか。

 変わりたいというか、「なんでこんなにうまくいかないんだろう」と考えていたら、自分が本気になっていなくて、サラリーマン根性で事業に向き合っているからダメなんだ、と気づいたんですよね。やっぱり、それなりに傷が大きくて、修羅場だったんですよ。2連敗して億単位のカネを溶かして、社内の風圧も大変でしたし。

 たいていは、そこまでの傷を負わないじゃないですか。事業で失敗したら怒られて、アサインを変えられちゃうと、それで終わりですから。でも、僕の場合はアサインを変えられなかったんでね。なんせ、新規事業を17回連続でアサインされているぐらいですから。

 そういう中で、田口さんの存在がすごく大きかったんだろうなというのを改めて感じますね。失敗していく中で、周りはいろいろ言うけれど、田口さんは「次をやれ」「次をやれ」と言ってきたわけですよね。守屋さんにとって、田口さんはどんな存在だったんでしょうか。そして、田口さんは何を大切にして環境をつくっていたんでしょう?

 誰にでも師匠がいると思うんです。田口さんは、僕にとって唯一無二の師匠だったという感じですね。

 田口さんって、主語が「事業」なんです。たいていの場合、主語は「我が社」か「私」じゃないですか。大企業は、「本業がいまいちだから、多角化せねば」と言ったりするんですが、その時点で「事業」ではなく「本業」が主語ですよね。

 ところが田口さんは、「それは顧客にとって本当に価値があるのか?」「価値がないなら、もっと違うものがいいんじゃないのか?」と問う。これは、当たり前に大事なことでありながら、なかなか徹底するのは難しいことなんじゃないかと。

 例えば、大企業で何か新規事業をやるとき、上半期はやれていても、下半期になると通期の予算達成が大事なので、経理や財務が出てきて、新規事業が全社予算の調整弁にされるとか、よくあるじゃないですか。

 その場合、主語が「本業」になっていると思うんですよ。「つくりたい未来の価値」ではなく、「今期の業績」が主語になっている。

 主語が、「今年の中計で立てた目標」だったり。

 または、主語が「自分」だったり、「今期の俺の評価」だったり。

 でも、田口さんはいつでも顧客や市場に、ブレずに向き合っていたのです。

当たり前のことを当たり前じゃないくらい徹底してやる

 またトヨタを例として話すと、「どうも車はガソリンから電気に変わるらしいぞ。今こそトヨタをひっくり返すチャンスだ!」と誰かさんが考えたとします。その誰かさんは、あえて極端な例にしますが、お医者さんと看護師さんだったとします。

 お医者さんと看護師さんは普段は病院を運営しているので、昼間は忙しいと。だから自分たちの業務の2割の時間を使って、「電気自動車でトヨタをひっくり返す」と言っているという。さて、トヨタの人は危機を感じるでしょうか。きっと、笑われると思うんですよね。「何言ってんの?」って。

 それと同じことをしちゃっているんです。自社の新規事業を自社の社員だけで立ち上げようとするのは、医者と看護師が自分たちだけで電気自動車を作って売る、トヨタの工場の工員と販売店の営業マンが自分たちだけで患者を診察したりするのと同じです。あきらかに無謀ですよね?  ここまで極端な事例だと、いくらなんでも気づくのですが、でもここまで極端でないと、気づかなくなってしまう。ホントはちょっと考えれば分かることなんですが、みんなやってしまっているんですよね。

 本気で向き合おうとしていない時点で、絶対にうまくいくわけがない。そういう環境をつくれるかというのはすごく大事ですが、田口さんは、ちゃんと向き合おうとしている限りは、その活動を支えよう、という方なんですかね。

 田口さんは、基本にすごく忠実なんですよね。新規事業は十中八九うまくいかないんだから、何遍もやる。売上は顧客からしか来ないんだから、顧客の価値にこだわる。これは子供でも分かるレベルの話ですが、現実に徹底してやるとなったら、そうはいかない。

 大企業で打ち合わせをしていると、「次の会議には財務の誰々が出てくるから」とか、「経企に根回しをしておかなければ」とか、延々と社内の話をしていて、顧客の話が1ミリも出てこないことがあるんですよね。

 ありがちですね。

 田口さんは、何でもないことを言っているけれど、その当たり前のことを当たり前じゃないぐらい徹底してやっているという時点で、めちゃくちゃ稀有な方なんです。そういう方のもとで20年間やらせてもらえていたのは、本当にいい経験だったと思っています。

 自分自身が、当たり前のことに対してどれぐらい本気で向き合えるか、そういう自分をどう見つけていくか。最初から見つかるわけではないと思うので、まず動いて、行動して、その中で傷ついたりしながら、自分の想いみたいなものが芽生えたときに、事業は形になっていくのかなと。

 とにかく、参考書ばかり読みすぎて頭でっかちになると、頭が重すぎて真っすぐ歩けなくなるんで。足腰を鍛えた方がいいんじゃないかと思います。

 みんな、うまくやろううまくやろう、としすぎているってことですね。

 ただ、本業ではそれが大事なんですよね。レクサスを一か八かで作っちゃダメですよね。レクサスの場合は、「とりあえず今回5個目の車輪をつけてみました」というのはやってはいけないんです。

 だから、本業に染まると、「正しくやる」「言われた通りにやる」「自分の分担が終わったら次の人にお渡しする」ということが身についてしまう。でも、新規事業に向き合うときは、そういうのは全部いらないです。

 ちなみに、散々いろいろ言ってきましたが、僕の中の最終的な結論としては、「それでも僕は大企業を諦めない」なんですよね。すべての大企業が本業の汚染で朽ち果てているとは思っていないですし、大企業の中にも本業の汚染に負けない戦士は必ずいるでしょうし、そういう人たちと、頑張って頑張って頑張って、どうにかして道を切り拓いていきたい、と思っています。

 汚染させたくて汚染させているわけではないので、いかに豊かにアンラーニングしていける環境をつくれるかが大事そうですね。

 「土から変えてみせる」という試みにも意味があると思います。とにかく我々は諦めないというのが大事ですね。

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アイデアが実り続ける「場」のデザイン
新規事業が生まれる組織をつくる6つのアプローチ

著者:小田裕和
発売日:2024年5月17日(金)
定価:2,090円(本体1,900円+税10%)

本書について

求められているのは、アイデアが「やってくる」環境をつくり、成功しても失敗してもそこから得られた学びを組織に還元すること。数々の新規事業施策の現場を見てきた著者が考える、価値を生む組織をつくるためのトップダウンのアプローチ3つと、ボトムアップのアプローチ3つとは?

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