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なぜ日本政策投資銀行が特許分析を行うのか──IPランドスケープを経営・事業戦略に活かす4つのステップ

登壇者:株式会社日本政策投資銀行 地域調査部 調査役 佐無田 啓氏

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特許価値分析サービス事例1:自社の競争優位性や競合他社との関係を確認する

 まず1つ目の事例の依頼者は、新規事業として物流用ドローンの製造を検討するメーカー。競合他社の出願傾向と特許価値を確認することで、「競争優位性を確保するために事業上必要な特許が押さえられているか」を判断したいという要望があった。また自社の注力分野と特許価値を明らかにし、投資家へ説明するストーリーに特許分析も材料にできたらという意図もあった。

 そこで「特許価値分析サービス」において、特許の活用意図がわかる形で技術を独自に分類し、特許ポートフォリオを図示するものを作成しアウトプットとした。

 この際の特許の絞り込みは大変な作業だったという。当然ながら「物流向けのドローン」という括りはあらかじめ用意されていない。そこで、まずはドローン事業に関係のある特許所有者を第一母集団とし、テキスト検索で絞り込み、そこから関係ないものについて“バグ取り”を行っていった。

 佐無田氏は「ひよこのオスメス判定のように、1つ1つ合致しているかの判断を繰り返し、分析の目的に足りる精度まで絞り込みを行った」と述べ、「掛けられる工数には限界があり、目的にかなった形に落とし込めているかバランスを見極めるのが非常に重要」と語った。

画像を説明するテキストなくても可

 そして、精査した特許について、件数(左上)と価値(左下)で年ごとに折れ線グラフで表現。また、特許件数の割合を棒グラフで表した。対象となる企業(オレンジ)や業界トップの企業(青)についてそれぞれの動向が見て取れる。

 佐無田氏は、「シェアを拡大している会社がどの分野で技術を積み上げ、どのように製品サービスに落とし込んでいるのかという観点を加えると、今後の洞察に活用できるはず」と語った。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:株式会社日本政策投資銀行/クリックすると拡大します

 また「どのような技術が伸びているのか」という観点でさらに細かく分類したのが、下記の図だ。特許の活用意図がわかるよう独自に分類してタグ付けしている。ここから、飛行制御技術(青)は安定してきており、安全な荷物の上げ下ろしや、運搬時に中身が崩れないようにする配送関連技術(オレンジ)が伸びてきていることが見てとれる。ここからかつては安定飛行の制御に力点が置かれていたが、近年はそれぞれの配送場面に合わせて適した技術を適用しようというトレンドがあるのではないかと洞察できるというわけだ。

画像を説明するテキストなくても可

 この2つの図を照らし合わせ、それぞれの会社ごとに分析をすることで、その会社がどの技術を伸ばそうとしているのかが見えてくる。そして、そこから何を目指そうとしているのか推測され、より戦略的な意図を洞察できるというわけだ。

 ただしこうした洞察をどのように使うかは、立場や見方によって変わる。例えば社内で知財が競争軸になる場合は、特許のポートフォリオをより強化するという考えもある。一方、既に特許で有利なポジションを築けているなら次の課題である販路構築を強化するほうがよい。あるいは技術の優位性をしっかり把握できるのであれば、それをお客様に届けるサービスの改善も検討できるだろう。

 また説明の相手が投資家の場合、期待される収益や稼ぎ方に対して必要な技術が保有できているかどうかがカギになる。IRなど別部門の情報を補強する材料にもなるだろう。逆に稼ぐモデルに対して足りない知見があるならば、その獲得のためにどのような取り組みをすべきかを投資家に示すことができる。このように、立場によってさまざまな使い方ができるというわけだ。

次のページ
特許価値分析サービス事例2:特許から専業度を測定し、連携先候補を発見する

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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