知財分析を経営・事業戦略に活かす4つのステップ
2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」をうけ、内閣府は『知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver2.0』において、5つの原則および7つのアクションをして整理している。このガイドラインにおいて、企業はバックキャスト型での戦略構築を求められている。
佐無田氏は、5つの原則のうち特に「ロジックストーリーとして開示・発信」が、特許分析を会社の取り組みに反映させるうえで極めて重要と語る。さらに推進するにあたって7つのアクションの「現状の姿の把握」が必要ながら「実は一番難しいのではないか」と評し、「そこについて私たちがコンサルティングサービスの中でサポートできるのではないかと意識して取り組んでいる」と語った。
なおコンサルティングサービスについては、4つのプロセスを設けており、「Phase0:分析イメージの明確化」を行ったうえで、「Phase3:経営戦略との接合」に向けて、「Phase1:ファクトファインディング(事実を見つける)」「Phase2:個別テーマ分析」を繰り返しながら行っていく。紹介した3つの事例はPhase1、Phase2の部分であり、それを踏まえてどのようなアクションに結びつけていくか、社内外への提案に至るケースが増えてきているという。
佐無田氏は、「分析しただけでは意味がない。そこから何かを読み取り、考察したうえでアクションに結びつけてこそ価値がある。しかし、そこで“打ち返されて”迷う方も多いというのが実感としてある。
そこで重要となるのが『Phase0:イメージの明確化』であり、ここで論点を特定していくことが、その後の特許分析の活動を活かすうえでのカギになる」と述べた。「Phase0:イメージの明確化」における論点特定について、「事業を良くすることが課題なら、特許以外の情報にアクセスすることが極めて重要。そのなかで産業調査を組み合わせて情報を生み出すことが有効」と語った。
そして特許情報と経営情報の接合イメージとして、順序としてはまず論点を明らかにして、そのうえで経営情報を出し、それを説明するための特許情報を紐づける。このようなプロセスを経ることがアクションに活かせる情報生成につながるという。
例えば、「製品群、技術領域」からIPCなどの特許分類を組み合わせて自社と他社の比較に使う、「他者、業界からの技術注目度」から、外部引用情報を使って製品開発の方向性や提携先の探索などに示唆を得ていく。
さらに佐無田氏は、「Phase0」の前に「Phaseマイナス1:地道なデータ収集」があり、ここに大きな労力がかかっていると指摘する。そして、日本語のデータだけでは最後のフェーズに大きく影響を受けること示唆し、世界中のできるだけ多くのデータにしっかりと当たる必要性を強調した。