なぜ日本政策投資銀行が特許分析を行うのか
日本開発銀行を前身として、政府が全額を出資する政府系金融機関として設立した日本政策投資銀行(DBJ)。戦後の復興および高度成長期の産業インフラへの長期融資を実施し、平成からは環境エネルギー対策や地域経済の活性化などに注力してきた。リーマンショックや地震災害時などの危機対応も実施し、「投融資一体」によるリスクマネーの供給も担う。中立的なポジションを生かして、経済価値だけでなく社会的価値にも着目して事業を展開してきた。
そんな同行に佐無田氏は2012年に入行。環境・CSR部を経験した後に九州支店を経て、2018年より産業調査部に異動し、財務以外の企業価値に着目し、特許分析を基にした経営戦略コンサルティングサービスを立ち上げた。現在は、産業だけでなく地域課題の解決を担う部門で、引き続き特許分析に携わる。
そもそもなぜ金融機関で「特許分析」を行うのか。それには、低金利の時代に融資事業の差別化を図るため、提案に必要な情報収集に特許分析が活用されてきたという経緯がある。佐無田氏は、「DBJから顧客企業への情報および特許分析ソリューションの提供は、知財部から社内外に対するそれと似ている」と評する。
DBJでは特許分析ソリューションを提供するレクシスネクシス社と共同で「特許価値分析サービス」を開発し提供しており、「競合の開発動向の把握」や「投融資前の技術的優位性の調査」「商品開発前に競合の特許や権利化の調査」などに活用されてきた。また実施においては、特許情報から得られる「インサイト」についての事実を確認する、個別のテーマなら開発動向やその先のアクション、M&Aなら技術がその事業にどのように適用できるのかなどを議論する、などといったシンプルな手法が取られている。
以降、「特許価値分析サービス」の事例が3つ紹介された。