「高度なものを作れる」日本発のサービスは世界で後れをとっている
経済複雑性指標(Economic Complexity Index)という言葉を聞いたことはありますでしょうか。これはハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が共同で開発した概念で、国の産業の多様性と知識の複雑性を測る指標です。この指標には、高度な技術と多様な製品を生産できる国が上位にランクインします。
その中で20年以上にわたり1位をキープし続けている国があります。2位以降は、スイスやドイツ、韓国、シンガポールなどの国が数年ごとに順位を変えながら上位を保っていますが、実は20年間、一度も入れ替わることなく1位の座を保持し続けているのは「日本」なのです。日本の産業は、自動車をはじめ、家電、アパレル、化学製品など幅広い分野で高い技術を求められる製品を生産し、長年にわたり世界をリードしてきました。
一方で、ソフトウェア全盛期ともいわれる今の時代、日本勢はどうでしょうか。EコマースならAmazon(米国)、ライドシェアはUber(米国)、CRMならSalesforce(米国)、音楽ストリーミングでいえばSpotify(スウェーデン)など、世界中で使われているソフトウェアサービスに日本発のものは見当たりません。国内利用に限ってみれば日本発のサービスもありますが、世界中で使われるものは少ないのではないでしょうか。
韓国企業や中国企業の“売る力”が強い理由
日本と世界では言葉や文化、商習慣が異なるから仕方ないと結論付けるのは、少々難しい面もあります。昨今ではスマートフォンや電気自動車(EV)、ファッションサイトやSNSプラットフォームなど、ハード、ソフト問わず、韓国企業や中国企業を発祥としたサービスを耳にすることが多くなったためです。
これまでは「日本の技術をコピーして、それを安く売っているから売れるのだ」という意見も一部でありましたが、明らかにそうではない事例が続々と誕生しており、確実に潮目が変わっていると感じる方も少なくないはずです。
中国や韓国は、言葉、文化、物理的な距離など、欧米と大きく異なる点で日本と条件が似通っています。そういった国々の躍進の背景には「マーケットリサーチ」と「ローカライズ」があります。
日本では完璧な製品を作り上げてから販売を開始する傾向が強いですが、韓国や中国から誕生した多くのグローバル企業では、テストマーケティングという形で、完成度が高くない段階であっても積極的に製品を市場に投入しています。そして、営業やマーケティングを徹底して行い、市場の生の声を集めてローカライズをしていくのです。自国でうまくいったモデルや商品をそのまま押し付けるのではなく、軽く市場に試験投入してみて、そこでの反応に基づいてローカル化する。これによって、多くの商品やサービスが成功を収めているのです。
前回の記事でもご紹介しましたが、市場の声を吸い上げるためには「製品にまずは日の目を見させる」ことが重要です。つまり、なるべく多くのエンドユーザーに届けることが何よりも大切なのです。