不確実性に正しく向き合う
ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授のイアン・マクミランとコロンビア・ビジネススクール教授のリタ・マグラスは「仮説指向計画法(”Discovery-Driven Planning”)」という新規事業開発アプローチを考案した。イノサイト社もこの考え方を採用している(詳細は関連記事にて)。
中核事業内での開発は、顧客やマーケット、競合他社などに関する経験や知識が豊富にあるので、確信を持って速やかに進められる。しかし、よく知らない隣接市場や新規事業分野へ進出しようとすると、顧客の好みや取引すべき流通業者についてなど、想定だけで仮説を扱うケースが増える。
問題は、多くの会社が仮説については語りたがらないということだ。新しいアイデアを上司に承認してほしい場合を例にして、アプローチの仕方について考えてみよう。
誤ったアプローチの例
「新しいアイデアがあります。今後5年間の予想収益・利益はこの通りです。コストや顧客維持率などの仮説に基づいたものです。承認してください」
利益についての不確実性、検証されていない仮説をきちんと伝えていないので、希望的な予測だけを頼りに意志決定、投資がなされてしまう。
正しいアプローチの例
「いいアイデアがあります。しかし、不確実な点が360ほどあります。そのうちの重要な項目を検証するために予算をつけてけていただけませんか」
不確実性をきちんと伝えて、確信が持てない点を確認したいとアピールしている。不確実性が高いので、認められる予算は少額となるだろう。
まず、不確実な事柄は1つずつの項目に落とし込み、1回のテストでは1つの項目だけをテストする。テストを繰り返し、学習により自信が深まってきた時点で投資を増やす。最初から多くの資金や時間、スタッフを投入してはならない。
以降、イノサイト社が推奨する、最もリスキーな仮説を識別する方法、低コストでスピーディにできるリスク管理方法を紹介していく。