KPMGモビリティ研究所は、スマートシティに関する住民の意識調査をまとめたレポート「スマートシティ 2024年版 わが国の主要5都市における意識調査〜住みやすい街づくりのためにできること」を発表した。
同レポートは、日本の主要5都市である東京23区、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市の18歳以上の住民に、スマートシティに関する「交通機関/モビリティ」「教育・将来の労働力の育成」「住環境」「医療サービス」「エネルギー/資源」「テクノロジー」の6つの分野について意識調査を実施したもので、2022年の発行に続く3回目となる。
スマートシティの認知度
スマートシティという言葉を「聞いたことがある」と回答した割合は、5都市全体で57.8%となり半数を超えた。しかし、スマートシティという言葉を「聞いたことがあり、内容も知っていた」は13.9%となり、多くの住民にとっては何となく聞いたことはあるが、よくわからない言葉と認識されていることがうかがえる。
スマートシティへの期待
スマートな都市の発展に期待することについては、「公共サービスの改善」が80.0%と最多となり、次いで「資源の無駄遣いの削減」が77.4%、「治安の改善」が77.0%と続いた。しかし、2020年の前回の調査結果と比較すると、スマートシティへの期待は全体的に期待値が低下している。中でも、「雇用機会の増加」の下げ幅が大きく、前回比4.6ポイント減少した。
スマートシティに関して期待する分野としては、「医療・ヘルスケア」が54.4%と最も多く、次いで「防犯・安心」が49.8%、「防災・減災」が49.0%と続いた。「医療・ヘルスケア」への期待度が高い理由は、スマートウォッチでの健康管理など、すでに生活の一部にデータ活用が入り込んでいることなどから、住民が自分の問題として捉えているためと考えられると同社は述べる。また、災害の多い日本らしく「防災・減災」に対する期待も高くなっている。
パーソナルデータの活用
パーソナルデータの活用に関しては、活用範囲に関わらず「活用すべき」との回答が50%(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)を超えており、パーソナルデータの活用に肯定的な傾向が見られた。
生活の豊かさにつながるサービス
生活の豊かさにつながるサービスとしては、「AI防犯カメラ」が最多で49.1%となった。他方で、さまざまな地域で取り組まれている「グリーンスローモビリティ」が7.6%、「電動キックボード」が5.8%、「MaaS」が5.5%と、モビリティ関連サービスへの回答割合は10%未満と関心が低くなっている。
大都市である5都市圏に居住する住民を対象としたものであることから、交通に不便を感じないことなどの理由により、交通に対する取り組みへの回答が少ないものと推察されると同社は述べる。また、2023年7月1日より電動キックボードなどに関する改正道路交通法が施行されたものの、乗車経験のある住民がまだ限られることなども生活の豊かさにつながるとは捉えられていない理由だと考えられるという。
なお、調査の概要は次のとおり。
- 調査概要:スマートシティに関する6つの分野(交通機関/モビリティ、教育・将来の労働力の育成、住環境、医療サービス、エネルギー/資源、テクノロジー)の現状評価・今後期待することについて、アンケートを実施
- 調査対象:東京23区、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市の18歳以上の住民
- 調査時期:2023年6月
- 調査方法:オンラインによる回答
- 回答数:2,601名
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