アジア・パシフィック地域における投資額は前年比4倍以上に急増の見通し
この最新調査によると、アジア・パシフィック地域の金融テクノロジー(フィンテック)投資は、1月から9月の9か月間で約35億ドルに達し、2014年の約8.8億ドルから急伸している。また、日本でのフィンテック投資も同期間においてすでに約4,400万ドルに達しており、2014年度の5,500万ドルに迫る勢いとなっている。
分野別にみると、決済業務(40%)が最も高い比率を占め、次に融資業務(24%)と続いており、これまで銀行が独占していた領域での投資が大半を占めている。
この調査によると、10月1日時点の投資件数は122件に達し、2014年の117件と対比して順当な伸びを見せている。さらに、投資金額を見てみると、中国で相次いだ国内外向けの大型案件により、飛躍的な増加となっている。
注目すべき案件としては、Alibaba Group Holdingsと関連会社Ant Financial Services Groupによるインドのモバイル決済プラットフォームであるPaytmへの出資や、P2P(Peer to Peer)およびB to Cのオルタナティブファイナンス・投資プラットフォームを開発するPing An Insurance Group傘下のベンチャー企業Lufaxによる資金調達の成功が挙げられる。
日本においても、国内とアジア向けにP2P決済プラットフォームを構築するエクスチェンジコーポレーション(ExCo)による資金調達など、決済サービス分野でのフィンテック投資が見られる。
銀行が注目すべき「ブロックチェーン」「クラウド」「サイバーセキュリティー」分野
さらに、アクセンチュアが次世代トレンドとして注目するブロックチェーンやクラウド分野についても、大きな関心が寄せられている。たとえば、東京に拠点を置くクラウド会計・給与計算サービス「Freee」(旧CFO)は、自動オンライン会計ソフト(銀行口座とクレジットカードを自動同期)の開発に向けた資金調達に成功した。
また、日本を拠点とするビットコイン取引所「bitFlyer」は、今年、シードおよびシリーズAラウンドによる資金調達を行った。
アクセンチュアのシニア・マネジング・ディレクターを務め、アジア・パシフィック金融サービスを率いるベアト・モネラット氏は次のように述べている。
「昨年は、既存の金融機関以外の大手企業が中国におけるフィンテック決済分野に投資を行ってきました。投資案件の大型化は、中国を始めとしたアジア・パシフィック地域の金融機関が使い勝手と利便性の高いデジタルソリューションを提供しなければ、個人向けサービスのみならず、法人向けサービスへもフィンテック企業が侵食してくることへの警笛と見る必要があります」
近年、金融機関は、フィンテックを業務効率化や、当局規制の変化および新たな通貨への対応に活用しようとしている。アクセンチュアは、分散型記帳により仮想通貨や暗号化された金融資産取引を支える技術であるブロックチェーンが、スタートアップ、銀行、投資家が注目する分野になると予想している。
ブロックチェーンは単体の技術として、銀行、クレジットカード会社やクリアリングハウスが協力することで、安全かつ迅速な清算処理の実現、カウンターパーティリスク削減や取引所要期間短縮による資本の最適化を可能とする。
フィンテックにおける別の注目分野としては、金融機関におけるクラウド活用が挙げられる。クラウド導入の機運が高まるにつれ、銀行はパブリッククラウドに格納可能なデータとプライベートクラウドに格納すべきデータの選別を進めている。
銀行は機密性の高い顧客データをプライベートクラウドに格納することで規制当局の要件を満たすと同時に、パブリッククラウドが実現する効率性、柔軟性、オンデマンド機能、コスト削減等のメリットを享受することが可能だ。この状況はフィンテック領域のスタートアップ企業にとって、クラウド関連の新しいサービスを提供する好機となっている。
さらに近年、大きく報道されている大規模な情報漏えいの影響もあり、来年はサイバーセキュリティーに対する投資が大幅に増加するとアクセンチュアは予測している。