人材流出での「凍結」から再始動。現場出身者が語るCV制度の変遷
イノベーション鈴木氏(以下、イノベーション):本日はよろしくお願いします。はじめに、清水建設のイノベーション活動と、榊原さんご自身の役割について教えてください。
清水建設榊原勲三氏(以下、榊原):清水建設は、建築・土木を中核とする総合建設会社です。近年は、持続可能な社会の実現に向けたイノベーション活動を「NOVARE」という部門で推進しており、「サステナビリティ」や「DX」など5つの重点領域を掲げています。私が担当しているCV制度も、このイノベーション活動のひとつです。CV制度の目的は、起業を促進して社員のチャレンジ精神を高めること、そして清水建設グループだけでは難しい社会課題の解決や事業領域の拡大を「共創」によって目指すことにあります。
私自身はプロパー入社12年目で、元々は現場監督でした。社員の約7割が現場におり、私のように現場の「不」を理解している人間が事務局にいることが重要だと評価され、この制度の運営を担当しています。
イノベーション:CV制度は現在3期目とのことですが、ここに至るまでには紆余曲折があったそうですね。まずは制度の変遷についてお聞かせいただけますか。
榊原:実は原型となる制度は2000年に「事業家公募制度」として存在しました。この時の採択案件から、後にIPOを果たしたプロパティデータバンクも生まれています。ただ、当時は独立後のセーフティネットがなく、制度利用者は「転籍(退職)」しか選択肢がありませんでした。
イノベーション:では、プロパティデータバンクすらも、当時は完全に「流出」という扱いだったのですね。
榊原:おっしゃる通りです。これが「単純な人材流出ではないか」と問題視され、制度は翌年に事実上凍結されてしまったのです。その後、プロパティデータバンクが2018年に上場したことをきっかけに、中長期的な視点で価値あるものだと見直されるようになりました。そこで2022年に「CV制度」としてリニューアルして再始動することになります。1期、2期を経て、今回の3期目では、特に「会社としてのリターン」や「独立後の支援」のあり方をさらに見直した形になっています。
仮説検証から独立まで、CV制度が定めた4つのステップ
イノベーション:CV制度は、どのようなプロセスで進むのでしょうか?
榊原:CV制度でも、各社が新規事業提案制度で多く採り入れている「ステージゲート制」を採用しています。
第3期の例で説明すると、「Stage 1(アイデア創出フェーズ)」 として、2025年9月から11月末までが公募期間です。応募者には「Gate 1」として書類選考と1次プレゼン審査を受けていただきます。
通過者は「Stage 2(仮説構築フェーズ)」 に進み、6ヵ月間、顧客課題やソリューションの具体化に取り組みます。その後「Gate 2(2次プレゼン審査)」 を経て、採択案件を絞り込みます。
そして「Stage 3(実行計画フェーズ)」 では、1年間かけてPoCの実施や資金調達、会社設立準備を行います。
最後に「Gate 3(最終審査)」 を通過すれば、晴れて「Stage 4(市場検証フェーズ)」 として独立・起業するという流れです。
