SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

Biz/Zineセミナーレポート

生成AIは「対話」から「実行」へ。95%が失敗する導入の壁、2026年に訪れるフィジカルAIの衝撃

登壇者:ブレインパッド 関口朋宏氏、鵜飼武志氏/BrainPad AAA 辻陽行氏

  • Facebook
  • X

 2025年は「AIエージェント元年」と呼ばれ、生成AIの活用トレンドはチャットボットによる対話から、自律的にタスクを完遂する「実行」へと劇的なシフトを遂げた。しかし、技術的な環境が整う一方で、多くの企業では既存業務への統合不全や組織文化の壁により、本質的な成果創出に苦戦しているのが実情だ。ブレインパッドが開催した説明会では、代表取締役社長CEOの関口朋宏氏、上席執行役員の鵜飼武志氏、BrainPad AAA 代表取締役社長 CEOの辻陽行氏が登壇。2025年の技術総括から、物理空間でのAI活用(フィジカルAI)、そしてAIを使いこなす「データタレント」の育成まで、2026年に向けた戦略が語られた。本稿では、技術の進化と現場の現実に横たわるギャップ、そしてその突破口をレポートする。

  • Facebook
  • X

「対話型」から「実行型」へ進化するAIエージェント

 冒頭、ブレインパッド 代表取締役社長 CEOの関口朋宏氏が登壇し、同社の事業概要について説明した。創業から21期連続増収を続ける同社は、「息をするようにデータが活用される社会をつくる」というミッションを掲げている。

 関口氏は、現在の日本が直面するデータ・AI活用の遅れや人材不足への危機感を表明しつつ、同社がプロフェッショナル支援、人材育成、SaaS提供の「三位一体」で、企業の「内製化」を支援していることを強調した。特に、労働人口減少が進む日本において、AIエージェントの社会実装は待ったなしの課題であるとし、2025年3月にAIエージェント特化の新会社「BrainPad AAA」を設立した背景を語った。

関口朋宏
株式会社ブレインパッド 代表取締役社長 CEO 関口朋宏(せきぐち ともひろ)氏

 続いて、BrainPad AAA 代表取締役社長 CEOの辻陽行氏が「AIエージェント元年を振り返る」と題して、2025年の技術的変遷を詳細に解説した。辻氏は、2024年までのAIは、ユーザーの指示に従う「Copilot(副操縦士)型」の対話体験が中心であったと振り返る。しかし2025年に入り、ソフトウェア領域では「Agent(自律実行)型」が急速に進展した。

 これは、単に対話をするのではなく、目標を設定すればAI自身が計画を立て、自律的にツールを用いてタスクを完遂させるという、「行動」を伴う技術である。辻氏は、検索から情報の取りまとめまでを自律的に行う事例などを挙げ、フェーズが「対話」から「行動」へとシフトしたことを印象付けた。

辻陽行
株式会社BrainPad AAA 代表取締役社長 CEO 辻陽行(つじ・はるゆき)氏

 技術的な観点の大きな変化として、辻氏は「MCP(Model Context Protocol)」の普及を挙げた。これはAIエージェントが外部ツールを利用するための共通規格である。以前は各ツールを連携させるために個別実装が必要だったが、MCPによって「ツールのコンテキスト(文脈)が共通化」された。これにより、エンジニアにとっての統合の敷居が一気に下がり、AIが多様なデータソースや機能を容易に呼び出せる環境が整ったことが、2025年の重要な転換点であったと説明した。

技術は整った。しかし、なぜ「95%」は失敗するのか?

 ツールを自由に扱える規格が整い、AIは自律的に行動できるようになった。技術的には「何でもできる」環境が整ったと言える。しかし、ここで辻氏は厳しい現実を提示した。

 米国を中心にAIエージェントの活用が進み、カスタマーサポート領域などでROI(投資対効果)213%達成やチケット解決率80%といった劇的な成果が見られる一方、生成AIプロジェクト全体を見ると、「95%は利益に直結する成果を生み出していない」というMITのレポートがあるというのだ。

 なぜ、技術は進化したのに成果が出ないのか。辻氏はその要因として、「学習のギャップ」や「業務統合の失敗」に加え、これまでの「プロンプトエンジニアリング」の限界を指摘する。

「これまでは、どう指示を出せば良いかというプロンプトの工夫が議論の中心でした。しかし、実際の業務でAIエージェントを活用しようとすると、指示の巧拙だけでは解決できない壁にぶつかります」(BrainPad AAA・辻陽行氏)

 ビジネスの現場では、企業固有のワークフローや特定のルールに基づいた正確な処理が求められる。汎用的なツールに「うまくやって」と頼むだけでは、業務は回らないのだ。では、残り5%の成功企業は何をしているのか。そして、日本企業が陥っている決定的な「構造的欠陥」とは何なのか。辻氏はその答えとなる概念、「コンテキストエンジニアリング」と次なる技術潮流について語り始めた。

次のページ
プロンプトの工夫では超えられない「文脈」の壁

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
Biz/Zineセミナーレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

Biz/Zine編集部(ビズジンヘンシュウブ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング