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エノテカ、カインズ、日本KFC 大手企業のDXをリードしてきた池照氏と考える内製実行力の高め方

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経営と現場のギャップは「投げっぱなし文化」から生じる

 髙野氏は先に挙げた三つの課題を、調査結果とともに詳しく解説する。

1.戦略と実行における経営と現場の認識ギャップ

 メンバーズが実施した調査の結果は、経営層と現場がDXの「重要性」と「達成度」について全く異なる認識を持っていることを明らかにした。経営層は「明確なビジョン・目標の共有」や「コミットメント」を重要視し、その達成度も高く評価している。しかし、現場の課長層はこれらの達成度を20ポイント以上も低く評価しているのだ。

 池照氏は、この乖離の原因を「投げっぱなし文化」に見出す。経営層はビジョンを提示したつもりでも、それを実行可能で具体的な指示に落とし込む責任を現場に押し付けていると指摘。現場は「これならできる」と確信できるプランを求めているにもかかわらず、それが得られないため実行に踏み出せない状況が生まれるのだ。

2.内製志向の高まりと深刻な人材不足

 内製化の必要性が叫ばれる一方で、それを阻むのが深刻な人材不足である。調査では、回答企業の90%以上が人材不足を訴え、特に実行工程で大幅な不足が生じていることが明らかになった。この背景には、IT人材がIT企業側に偏在しており、ユーザー企業では3割程度しか確保できていないという構造的な問題がある。

 池照氏は「従来の採用プロセスでは、この問題は解決しない」と指摘。企画段階で「こういう人材が欲しい」と描いても、実際に採用活動を開始してから人材が確保できるまでには半年から一年近くかかることも珍しくない。このタイムラグは、DXのスピード感を著しく損なう。

3.内製達成度の低さと外部パートナーへの不満

 人材不足を補うため、外部パートナーに頼らざるを得ない企業は多い。しかし、ここでもジレンマが生じている。調査では、外部パートナーに対する満足度が非常に低いことが明らかになったのだ。

 特に企業が不満を感じているのは「ノウハウの蓄積」や「組織変革への貢献」といった内製化への寄与度である。

 外部パートナーは短期的なプロジェクトを効率的に進めることができるため、形式的にはDXの達成度を早く高めることができる。しかし、それが自社の長期的な成長につながる「内製実行力」の向上には結びついていないようだ。顧客は単なる業務遂行ではなく、自立できる組織への変革を求めている。

 池照氏によると、このジレンマは外部パートナーとの間に存在する「発注・受注」の関係性に原因があるという。仲間意識の希薄さが、深い協業や知識の共有を妨げているとの考えだ。

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人が採れないことを前提とした計画立案を

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この記事の著者

渡辺 佳奈(Biz/Zine編集部)(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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