EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)は、戦略・M&Aトランザクションアドバイザリー業務を行う「EY-Parthenon(EYパルテノン)」において、株主提案の動向を分析し、その結果を発表した。
主な分析結果は次のとおり。
1. PBR1倍超企業への株主提案が増加
これまで低PBR企業が主なターゲットであったが、時価総額1,000億円以上かつPBR1倍超の企業にも提案が広がっている。資本効率が改善されていても、キャッシュアロケーション(配当・投資)が不十分な企業は株主提案の対象となる傾向が強まっている。
2. アクティビストの株主提案は経営戦略上の提言実行を意図したものが多数
アクティビストの株主提案は、表面的には資本政策や役員選解任、情報開示を求める内容が中心。しかしそれらは、並行して行われるキャンペーンと連動し、事業ポートフォリオの見直しなど経営戦略上の提言実行を促す意図が込められているという。

3. ISSの推奨傾向
議決権行使助言会社ISSは、アクティビストによる株主提案に対し、4割の議案に賛成を推奨。議案種類別では役員の報酬制度に対して8割弱、資本政策に対して6割弱の議案に賛成を推奨している。
4. アクティビストの株主提案への賛成動向
賛成率が20%以上の議案の割合は前年から微減しているが、情報開示以外の議案は2025年でも3~5割の議案が20%以上の賛成率を得ており、アクティビストの影響は大きいと考えられる。資本政策関連の株主提案(主に配当・自己株取得)は事業投資を積極的に行わない企業が、役員の報酬制度(主に株式報酬制度)は株主へのリターンを創出できていない企業が、賛成率が高くなる傾向にある。
EYSCではこうした動向を踏まえ、企業が市場からの支持を得るためには「企業価値最大化に向けた戦略策定」が求められると分析。企業は資本コストを上回る成長領域への投資を進める一方で、余剰キャッシュは配当や自社株買いに活用し、株主価値の低下を回避する必要があるという。また、戦略の実効性を担保するためのガバナンスとして、経営知見を持つ取締役の選任や、取締役会の監督機能の強化が不可欠とのことだ。
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