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私の新規事業史

DeNAでの成功体験から大企業との共創まで。Relic北嶋氏が語る、新規事業キャリアと次の展開

ゲスト:北嶋貴朗氏

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 日本企業の新規事業創出が、大きな転換点を迎えている。コロナ禍を境に経営層の危機意識は高まり、新規事業やDXは経営アジェンダの中心に据えられるようになった。そんな変化の最前線で、大企業やスタートアップの事業創出を支援し続けてきたのがRelicグループだ。代表取締役CEO/Founderの北嶋貴朗氏は29歳で起業。「日本企業の強みとデジタルテクノロジーを掛け合わせれば、桁違いのインパクトを生み出せる」という信念のもと、単なる“支援”を超えた“事業共創”に取り組んできた。創業10周年を迎えた今、日本企業の新規事業環境の変化と次の10年への展望を聞いた。

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“導火線に火がついた”状態で始まった新規事業キャリア

──北嶋さんは29歳でRelicを創業され、2025年8月に10周年を迎えられました。まず、一貫して新規事業というキャリアを歩むことになった原点からお聞かせください。

北嶋貴朗氏(以下、北嶋):新卒で入社したのは、中小・ベンチャー企業向けに組織・人事系のコンサルティングを手がけるワイキューブというベンチャー企業でした。とても魅力的で勢いのある会社でしたが、入社直後にあったリーマン・ショックの直撃などから、売上の7割を占める主力事業がまったく売れなくなり、会社が倒産の危機に瀕してしまったんです。

 そこで新規開拓や新ソリューションを開発して提案する広義の新規事業チームにアサインされ、会社の売上を何とか作らなければならないという、まさに“導火線に火がついた”状態で新規事業に携わることになりました。チーム一丸となり、約1年で数億円の売上は作れたものの、会社全体を支える規模には至らず、最終的に民事再生という形になりました。

 この経験で痛感したのは、既存事業を伸ばすグロースのスキルと、ゼロから会社の屋台骨となる事業を創るスキルはまったくの別物だということです。この気づきが私のキャリアを決定づけ、その後、上場企業でHR事業の立ち上げ、新規事業専門のベンチャーファーム、そしてDeNAでの新規事業責任者を経て、29歳でRelicを創業しました。

──DeNAでのご経験が、Relicの創業理念に大きな影響を与えたそうですね。

北嶋:はい。大手小売業との協業が決定的な体験でした。大手小売業の顧客基盤やMD力と、DeNAのデジタル技術やマーケティング力を掛け合わせたEC事業を立ち上げ、短期間で流通総額100億円規模まで成長する事業を共創できたのです。様々な試行錯誤や失敗も含めた多くの経験から、日本企業の優れたアセットを活かした事業を創出できれば、桁違いのインパクトを生み出せると確信しました。

 外から見ると魅力的なアセットがありながら、DXやAXの遅れでポテンシャルを発揮できていない日本企業は非常に多い。だからこそ、そこにイノベーションの余地が大きく、実現すれば大きな成果や成長を実現できるという強い手応えを得ました。

株式会社Relicホールディングス 代表取締役CEO/Founder 北嶋貴朗氏
Relicグループ 代表取締役CEO/Founder 北嶋貴朗氏

挫折する人が多い新規事業を続けられた2つの要因

──一方で、新規事業は多くの人が挫折する領域でもあります。北嶋さんが長年携わり続けてこられた要因は何だったのでしょうか。

北嶋:自分に向いていたかはわかりませんが、とにかく「誰よりも多く打席に立ち続けてきた」キャリアだったと振り返ります。そもそもビジネスの世界で、本当にゼロからイチを生み出す機会は極めて希少です。ベンチャー企業でさえ、多くは立ち上がった事業の運営が中心で、純粋な新規事業開発の機会はそう多くありません。私は幸運にも、その機会を継続的に得られたことが大きかったと思います。

 もう一つ、「不確実性への耐性」もあったと思います。新規事業は基本的に暗中模索の連続で、仮説検証を繰り返しても「まったく売れない」「ターゲットに響かない」といったことが当たり前に起こります。精神的に参ってしまう人も多い中、私はその状況を苦痛に感じず、前向きに試行錯誤を続けられました。

──具体的には、どのような新規事業を手がけてこられたのですか。

北嶋:たとえばコンサル時代には、フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトに関わる様々な新規事業に加え、商社の海外ファッション事業や、コンビニのギフトカードモール事業、HRTechのプロダクトなど。DeNAでは前述の大手小売業とのEC事業の他、食品・日用品のショッピングモールや医薬品のEC、各種メディア、フォトギフトなど、業界も規模もまったく異なる事業を手掛けました。

 多様な企業、多様な立場で新規事業に向き合えたことは稀有な経験であり、これがRelicの創業につながる重要な基盤となりました。

 重要なのは、企業にとって新規事業人材は不可欠であるにもかかわらず、その経験を積んだ人材が極端に少ないという点です。この構造的な人材不足こそが、新規事業開発における大きな課題なのです。経験を積めば成功確率は確実に向上しますが、その経験を積む環境や機会自体が限られているのが現実です。

次のページ
多様な事業経験を体系化し、再現性ある成功モデルを社会実装する

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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