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なぜ新規事業は「教科書通り」でも失敗するのか。慶應義塾大学 冨田名誉教授に聞く、「脱優等生」のススメ

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異端児は3人集まると革命の起点になる

川下:ただ、せっかく「やんちゃな人材」を採用しても、大企業の役員会という壁が立ちはだかります。

冨田:多くの大企業では、役員もまた、競争を勝ち抜いてきた「超・優等生」たちです。彼らが最終意思決定をする際、前例のない案件は「継続審議(ペンディング)」になりがちです。却下ならまだしも、結論を先延ばしにしてしまう。これも「減点」を恐れる心理が働くからです。

川下:現場の熱量が、会議室で冷やされていく感覚はよく分かります。どうすれば突破できるのでしょうか。

冨田:組織の構造を変えることです。会議室に「やんちゃな人」が1人しかいないと、異質な意見は「空気が読めない」と黙殺されます。しかし、2人目が「僕もそう思います」と同調し、さらに3人目が続くと、場の空気はガラッと変わります。

 実は、組織の大多数は「ノンポリ(日和見)」なんです。強い意見やマジョリティに流れる性質がある。だからこそ、1割の「やんちゃ枠」を作り、彼らが共鳴し合う状況を作れば、ノンポリ層を巻き込んで組織全体の意思決定を変えることができるはずです。1人の異端児は排除されますが、3人の異端児は革命の起点になり得るのです。

イノベーターは「育てる」のではなく「放牧」せよ

川下:採用した後の「育成」についても伺いたいです。企業はよく「やんちゃ枠」で採った人材も、新人研修で丁寧に型にはめようとしてしまいます。

冨田:それは最悪ですね。アインシュタインは「人を育てることはできない。できるのは助けることだけだ」と言っています。手取り足取り教えることは、自分で考える機会を奪うことです。水泳と同じで、浮き輪につかまっている限り、いつまで経っても泳げるようにはなりません。どこかで手を離し、水を飲んで溺れかける経験をしないと、自力で泳ぐ感覚は掴めない。大人は死なないように見守るだけでいい。私はこれを「放牧」と呼んでいます。

川下:「放牧」ですか。ただ、放っておけば誰でも育つわけではないですよね?

冨田:その通りです。「放牧したら覚醒する」のではなく、「覚醒したやつを放牧する」のが鉄則です。「俺はこれをやるんだ」という腹落ちした目的を持っている人間は、放っておいても勝手に走ります。会社がやるべきは、彼らの邪魔をしないこと、そして彼らが求めてきた時だけ相談に乗ること。給料を払っているからといって短期的な成果を求めたり、管理しようとしたりしてはいけません。

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「通信簿」の評価制度が諸悪の根源

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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