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なぜ新規事業は「教科書通り」でも失敗するのか。慶應義塾大学 冨田名誉教授に聞く、「脱優等生」のススメ

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「通信簿」の評価制度が諸悪の根源

川下:管理の話でいうと、多くの企業で行われている「人事評価」もイノベーションの阻害要因になっている気がします。

冨田:私は、ABCをつける「通信簿」のような評価制度は、諸悪の根源だと思っています。上司は評価のために膨大な時間を使い、社員は「なんであいつがAで俺がCなんだ」とモチベーションを下げる。何より問題なのは、社員が「評価者である上司の顔色」を伺うようになることです。スポーツで審判の顔色ばかり見ている選手はいませんよね。さらに単年度のPL(損益計算書)や目標管理で縛ると、誰も3年後、10年後の大きな絵を描かなくなります。

川下:確かに、サラリーマン社長だと任期中の成績が重視されるので、長期的な種まきが難しくなりますね。

冨田:オーナー社長が強いのは、20年後の会社の姿を自分ゴトとして考えられるからです。イノベーションは、今日種を蒔いて明日実るものではありません。10年、20年かかるかもしれない。それを「今年度の評価」という物差しで測ろうとすること自体が間違っているのです。評価ではなく、ビジョンを共有し、挑戦そのものを応援する文化が必要です。

「努力」は「夢中」には勝てない

川下:以前、冨田先生に著書へのサインをお願いした際、「夢中は努力に勝る」という言葉をいただきました。これがすべての核心だと感じています。

冨田:日本人は「努力」が好きですよね。嫌なことでも歯を食いしばって頑張ることを美徳とする。『巨人の星』の世界観です。もちろん、基礎学力をつけるための努力は否定しません。しかし、トップ・オブ・トップの人材は、努力している感覚なんてないんです。たとえば、フィギュアスケートの羽生結弦選手が4回転半ジャンプに挑んだ時、周囲は「金メダルを狙うなら4回転を確実に跳んだほうがいい」と言いました。でも彼は挑戦した。それは彼が「夢中」だったからです。

川下:確かに、ゾーンに入っている時は、ご飯を食べる時間すら惜しいと感じます。

冨田:「努力」は何かを達成するための手段ですが、「夢中」はそれ自体が目的になり得ます。業務に集中している最中に話しかけられて中断させられると腹が立つように、夢中になっている人の集中を途切れさせてはいけない。企業が「努力して成果を出せ」と尻を叩くのではなく、「夢中になれる環境」をどう作るか。それがイノベーションの鍵です。

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「ワーク=苦役」は思い込み。事業は熱狂から生まれる

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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