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なぜ新規事業は「教科書通り」でも失敗するのか。慶應義塾大学 冨田名誉教授に聞く、「脱優等生」のススメ

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「ワーク=苦役」は思い込み。事業は熱狂から生まれる

川下:「夢中」というキーワードが出ましたが、世の中で叫ばれている「ワーク・ライフ・バランス」についてはどう思われますか?

冨田:あれも優等生的な発想ですね。「ワーク(仕事)」を「苦役(労働)」と定義してしまっている。仕事は辛いものだから、プライベートとしっかり分けてバランスを取りましょうと。でも、昭和の時代の仕事って、もっと「サークル活動」や「文化祭の準備」に近かったと思うんです。金のためでも評価のためでもなく、「これやったら面白いよね」と熱中して、気づいたら徹夜していたような感覚。そこにはワークとライフの境界線なんてありません。

川下:どの分野でも、トップ・オブ・トップの人は仕事と仕事以外の境界があいまいなくらい熱中し続けていますよね。

冨田:そうです。地殻変動のような大きな波は、誰かの「熱狂」から始まります。「仕事=苦役」と捉えているうちは、その波に乗ることはできません。「大人の文化祭」のように、仕事そのものを夢中になれる対象に変えていくこと。それができれば、日本人の生産性や幸福度はもっと上がるはずです。

愚痴の飲み会を「人語(じんかた)」に変えよ

川下:最後に、組織の文化を変えるための具体的なアクションがあれば教えてください。

冨田:私は「飲み会」の改革を提案したいですね。普段の飲み会は、上司の愚痴や噂話、あるいは表面的な他愛のない話で終わってしまいがちです。これは人生の無駄遣いです。そこで私がSFCで教えていた頃から実践しているのが「人語(じんかた)」です。「人生を語る」の略で、この時間は俗な話題を禁止し、「人生とは何か」「社会の幸せとは何か」といった青臭いテーマについて本気で語り合うのです。

川下:「意識高い系飲み会」ですね。

冨田:そうです。普段は「意識高い」と冷笑されがちなことも、ルールにしてしまえば熱く語れる。そこで重要なのは「意見対立」を恐れないことです。日本人は「意見の対立=人間関係の対立」と捉えがちですが、それは違います。お互いの価値観をぶつけ合い、深く理解し合う。そんな「人語」の場からこそ、本質的な信頼関係とイノベーションの種が生まれると信じています。

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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