40周年を迎えた「鳥貴族」の現在地
セミナーの冒頭、経営企画室長の北川航氏は、2026年7月期第2四半期の決算実績を報告した。売上高は前年同期比14.5%増の253億円、営業利益は同22.5%増の16億円と、計画を上回る増収増益を達成。その背景には、国内「鳥貴族」の既存店売上が極めて堅調に推移していることがある。
特筆すべきは、2025年5月の価格改定後も客数が前年を超えて推移している点だ。北川氏は、40周年記念メニューの展開やアパレルブランド「URBAN RESEARCH」とのコラボなど、飲食の枠を超えたブランド認知拡大策が既存店売上に寄与していると分析する。
一方で、同グループの視線はすでに世界へと向いている。2024年5月のアメリカ進出を皮切りに、韓国、上海、さらには台湾、香港など「複数ヵ国同時進行」で展開を加速させている。
「各国で焼き鳥のリーディングブランドはまだ不在です。アメリカでは人件費や物価の高さという課題はありますが、店舗段階での黒字化を達成しており、業態としてのポテンシャルは非常に高いと確信しています」(北川氏)
特にベトナム進出においては、日本国内の店舗で活躍したベトナム出身の元スタッフが、母国での開業に即戦力として多数応募したという。北川氏は、これを「鳥貴族人材の還流」と呼び、単なる店舗拡大に留まらない、理念を軸としたグローバルな人材基盤の構築に自信を見せた。
効率化の先にある「おもてなしの再定義」
続いて執行役員CDIOの中林章氏が登壇し、同社の命運を握るDX戦略の全貌を明かした。パナソニックで30年のキャリアを積み、くら寿司で現場のデジタル化を主導してきた同氏が着任して真っ先に取り組んだのは、「外食におけるDXの目的」の再定義である。
中林氏は、過去のシステム化が「コスト効率重視のセルフ化」に偏り、外食本来の価値である「おもてなし」を希薄化させてきたのではないかと問いかける。
「我々はもう一度、おもてなしを取り戻したい。ただし、昔に戻るのではなく、『人とデジタル』の融合でそれを実現します。AIを成熟させ、人だけに依存する形から脱却し、高付加価値な経営を目指します」(中林氏)
中林氏が提示した「DX進化モデル」は、単なる省人化ではない。AIが顧客の過去の注文を学習し、会話型で最適なレコメンドを行う一方で、最後にお客様を見送るのは「血の通った人間」である店員だ。この「AIによる自律化」と「人の温もり」のハイブリッドこそが、競合との最大の差別化要因になると強調する。
このビジョンを実現するための主要テーマが、「カスタマージャーニーの統合デジタル化」だ。現在、SNS、アプリ、店内のタブレットといった各接点は垂直型(個別最適)に構築されているが、これをお客様を軸とした水平型へと再設計する。IDや行動データを連動させることで、一気通貫の体験価値を創造していく構えだ。
