なぜ「新リース会計基準」の対応実務は複雑なのか
セミナーの冒頭、PwCビジネスアシュアランスの服部雄介氏は、新リース会計基準が求める実務の峻烈さを「圧倒的な『量』と、高度な『判断』の連続」と表現した。2024年9月に確定した新基準では、契約名が「賃貸借契約」でなくても、実質的に資産の使用権を支配していればリースとみなす「リースの識別」が求められる。
「店舗経営を行う企業などは、検討すべき契約数が膨大になります。かといって全契約を精査するのは現実的ではない。どこでラインを引くべきかという判断が難しいのです」と、服部氏は実務の難所を指摘する。
さらに実務を複雑にするのが、適用開始後の「事後測定」だ。リース期間の延長や賃料改定といった「契約変更のイベント」が発生するたびに、再計算と仕訳の修正が必要になる。この煩雑さが、高額なリース管理システムの導入を不可避にする「コストの壁」を生んでいた。
「期限・システム・予算」という制約条件
服部氏は、現在の相談案件の多くに「期限・システム・予算」という3つの制約があることに触れた。
「2年半あった準備期間も残り1年を切りました。今から数千万円の予算を投じ、半年以上かけて大規模なシステムを構築するのは、中堅企業や子会社にとって極めて重い負担です」
そこでPwCが打ち出したのが、「システム導入不要で1年以内の対応完了」を掲げるキットである。
このキットの最大の特徴は、使い慣れた表計算ソフトで仕訳や注記情報の生成を完結させる点にある。外部アドバイザーへの全面委託やシステム導入には通常5,000万円以上の予算が必要とされるが、本キットは「数百万円程度」という低コストで提供される。服部氏は「大規模なシステムを入れるほどではないが、手作業では限界がある」という企業のボリュームゾーンに対し、現実的な解を提示した。
