過剰規制は競争力を奪う。AIの「思春期」に伴走する社会へ
関:EUがAI規制を先行させる中、日本はこれからどういう方向に向かうべきでしょうか。
森田:規制が行き過ぎてしまうと、技術主権を放棄して「データ主権」と「運用主権」だけで守るしかなくなります。これは我々にとって、日本の技術や国際的な競争力を完全に放棄したことになり、非常に危険なことです。
そのため、AIのために特別な規制やルールを作って過剰にプロテクトするのではなく、著作権法など、既存の通常のルールで守れる形で適正に対応していくことが重要だと考えています。

関:Anthropicは自主規制ポリシーを採用していますが、政府の介入は必要でしょうか。
東條:弊社の共同創業者 ダリオ・アモデイは、現在のAIを「思春期」と表現しています。体(モデル)は十分に大人なのに、心や頭(社会のルール)が未熟で追いついていない状態です。
思春期の子供に対して、すべてを禁止するのも放任するのも違いますよね。我々が考えるのは「伴走」です。政府が伴走の主体になるとしても、強すぎる規制は不要です。企業側もマニュアルを作ってきっちり守りつつ、ときには少し緩やかな運用を取り入れる柔軟性も必要でしょう。そして最後に「社会」。フェイク画像などに対して社会全体で意見を持ち排除していく。政府・企業・社会の三位一体で考えていくことが求められます。
日本の強み×AIで勝機を掴む。世界に示す「第3の選択肢」
関:最後に、日本がAI分野で世界をリードできる可能性について展望をお聞かせください。
森田:現在、世界のAIは米中が最先端を競っていますが、もし世界に「この2つの選択肢」しか存在しないとすれば、日本も他国も非常に難しい選択を迫られ、不幸なことになります。
だからこそ、日本の持つテクノロジーをベースに、アメリカとの連携も含めながら世界へ「第3の選択肢」を提供すること。そしてこれから本格化する「インターネット外のデータの時代」において、適正なガイドラインや規制標準を日本から提案できる形になればと強く思っています。
東條:日本にはまだ表に出ていない素晴らしいテクノロジーがたくさんあります。そうした日本の強みとAIの「掛け算」によって、まったく新しいイノベーションやアイデアが生まれてくるはずです。
そこで生まれたものを、日本から海外に向けてどんどん発信していく。日本の皆様とともにそんな未来を築いていけたらと考えています。
関:大変有意義な議論となりました。本日はありがとうございました。
