汎用AIと特化型AIはどう使い分ける?コストと精度の課題
パネルディスカッションの後半では、企業現場におけるAIの利用実態とコストに関する議論が行われた。現在、企業ではChatGPT、Claude、Geminiといった汎用AIの導入が広く進む。
一方で、これらのモデルはバージョンやプロンプトの入力内容によって出力結果に差異が生じる。また、最新の高性能モデルを業務で継続的に利用する場合、トークンコストの増加が実務上の課題として浮上している。
コストと出力精度のバランスについて、羽深氏は用途に応じた使い分けの有効性を提示した。必ずしも最新モデルを使用しなくても、一世代下のモデルのほうがレスポンスが速く、人間相手の説明に適しているケースがあるという。
高野氏は、汎用AIとリーガルテックプロバイダーが提供する特化型AIについて、次のように指摘する。
「専門のリーガルテックプロバイダーが作っているリーガルサービスというのは、やはり汎用のAIとは違って、AIの選び方、学習のさせ方、データベースの力、そしてプロフェッショナルとして築いてきた専門性とノウハウがあります」(高野氏)
日常的なリサーチや初期的なアイデア出しには汎用AIを使用し、専門的なノウハウやデータベースが要求される契約レビューなどの業務には特化型のリーガルテックを利用するというのだ。
「汎用AIと、こうしたリーガルテックのサービスプロバイダーが提供するAIプロダクトというのは、質的にもまったく違うものであると認識することが重要です」(高野氏)
それぞれの特性を理解した上での使い分けが、コスト管理の観点からも重要となる。利用企業側には、使用されているAIモデルの特性を把握し、サービスを適切に選択する知識が求められる。

「シャドーAI」のリスクと、事業部門におけるAI利用の統制
参加者との対話では、企業内に潜むシャドーAIへの対策と、事業部門でのAI利用に対する法務部門の対応に関する議論が行われた。
羽深氏は、企業におけるAIの利用ポリシーの設定について、次のように警鐘を鳴らした。
「このシャドーAIのリスクというのは、会社のポリシーが厳しければ厳しいほど高まります」(羽深氏)
利用実態が隠蔽されることで、入力される機密データやプロンプトの内容が管理できなくなる。結果として、情報漏洩やコンプライアンス違反につながる深刻な懸念が生じるというわけだ。
会場の参加者からは、事業部門が独自の判断で生成AIを用いて文書作成や契約書のレビューを行う事例が共有された。法務部門としてどのような使用制限やルールを設けるべきかが、実務上の課題となっている。AIによって生成された体裁の整った文章から事実関係や法的な問題点を法務担当者が読み解く作業が発生し、かえって確認コストが増加しているという実態も報告された。
これに対し高野氏は、会社が認めているAIを利用する限り、事業部によるAIの使用自体を厳しく規制するのは現実的でなく、従来どおりの法務の基本対応を徹底することが重要であると述べている。
「会社が利用を認めているAIを利用する限り、事業部側が契約書レビューなどでAIを利用することを規制するのは難しいと思います。大事なことは、事業部にAIはオールマイティではないことを理解させた上で、法務部門に相談することの意義や法務専門性の重要性を認識してもらうこと。法務部門側も、その専門性を活かしてAIも駆使し、高度な機能発揮に努めること。AIの時代でも、法務としての基本姿勢を忘れずに、しっかりと対応していくのが大事ではないかと思います」(高野氏)
事業部門がAIで作成したドラフトを提示した場合でも、その契約や文書作成の目的、対象ビジネスの内容をヒアリングし理解する。事業の意図を把握した上で法務的な判断を下すという手順は基本的に変わらないというのだ。法務担当者には、ツールを管理しつつ事業部門とのコミュニケーションを深化させるマネジメント体制の構築が求められている。



