なぜNECは過去最高益を達成できたのか。雨宮CFOと語る、AI時代のCFO像とコーポレート機能の進化
登壇者:日本電気株式会社 雨宮邦和氏、一般社団法人日本CFO協会 日置圭介氏
2026年10月8日、Biz/Zine編集部が主催したオンラインイベント「Biz/Zine Day 2026 Autumn」が開催された。テクノロジーの進化が加速度的に進む現代において、企業価値を維持・向上させるためには、財務データや事業オペレーションの高度な可視化と迅速な意思決定が不可欠である。特に2024年以降の生成AIやAIエージェントの劇的な台頭は、バックオフィスやコーポレート機能の存在意義を根底から揺さぶっている。2026年4月に日本電気株式会社(NEC)の取締役 代表執行役副社長 兼 CFOに就任した雨宮邦和氏が、「2030年、AI時代のCFO組織と次世代CFO像とは~」をテーマに登壇。モデレーターを務める一般社団法人日本CFO協会 エグゼクティブ・フェローの日置圭介氏とともに、同社が目指す2030年に向けた成長戦略、AIを活用したコーポレート機能の高度化、そしてAI時代における新たなCFO像と組織のあり方について語った。大規模組織の変革とAIネイティブな企業変革のリアルな知見から、企業価値を高めるための「未来地図」を解き明かしていく。
AI時代の価値構造のスマイルカーブとNECが描く成長シナリオ
生成AIの破壊的進化、いわゆる「アンソロピック・ショック」をはじめとする市場構造の激変は、IT企業の従来のシステム構築(SI)を中心としたビジネスモデルに大きな再考を迫っている。単にシステムを構築・コーディングするタスクそのものの市場価値は相対的に低下し、価値の重心が上流の「コンサルティング(アジェンダ定義・ビジネスデザイン)」と下流の「オペレーション(継続的な顧客価値提供)」へと急速にシフトしているためだ。
こうした市場環境の変化に対し、NECは2026年5月に発表した新中期経営計画(2030年度目標)において、明確な成長戦略を掲げている。
同計画では、主要事業を「AIの社会実装を担うITサービス」と「新たな安全保障の技術実装を担う社会インフラ」の2本柱で再定義した。ITサービス領域においては、顧客との共創で培った「ドメインナレッジ(業界特有の専門知識)」と、構想から運用までを一貫して担う「End to Endの実装力」を強みとし、価値創造モデル「BluStellar」を通じてAIトランスフォーメーション(AX)を推進する方針だ。
一方、社会インフラ領域では海洋・通信・宇宙・サイバーなどの防衛・安全保障ノウハウを軸に、防衛技術と民間技術を相互活用する「デュアルユース」を展開し、両事業の相互作用によって持続的な成長を目指している。
財務目標としては、2030年度に向け営業利益(Non-GAAP OP)および1株当たり利益(Non-GAAP EPS)の年平均成長率(CAGR)15%以上、2025年度比で営業利益を「2倍」にするという非常に意欲的な計画を発表した。前中期経営計画(2021~2025年度)においても利益2倍目標を上回り達成した同社だが、今回の新中経ではさらに拡大した事業基盤をベースに再度の倍増を目指す。
NECのCFO 雨宮邦和氏は、この強気な目標設定の背景について次のように語る。
「AIの進化によってシステム構築におけるコーディングなどはAIが代替していきます。その分、上流のコンサルティングと下流のオペレーションに価値がシフトし、ドメインナレッジを持っている領域がAIを活用して多様な事業を作り出していく。NECにとっては非常に大きなビジネスチャンスであり、2030年に向けた高い財務目標もこの機会を確実に捉えるための意思表明です」(雨宮氏)
また、キャピタルアロケーション方針においては、成長投資枠として最大1.2兆〜1.3兆円規模を想定し、買収検討やモニタリングには「Cash ROIC評価」を厳格に適用することで資金効率を徹底管理する。株主還元では安定的な増配と機動的な自社株買いを継続し、自己株式が発行済株式数の5%を超えた場合は原則として消却を実施するなど、財務規律と成長投資のバランスを高度に維持していく構えである。
1991年NEC入社。国内支店での営業職を経たのち、17年間にわたり金融システム領域に携わり、証券業界初のオープン系システム構築など数多くの大規模プロジェクトを成功に導く。2019年に執行役員就任。中央省庁、公共、準公共分野を中心としたパブリック領域のビジネスをリード。マイナンバー関連や基幹システム標準化、クラウド移行など行政のデジタルトランスフォーメーションを推進し、日本の公共サービスの基盤整備に貢献した。また、事業の再編と統合を進め、安定的な収益基盤の強化にも寄与した。2026年4月に現職である副社長兼CFO(最高財務責任者)に就任。ファイナンス機能のみならずコーポレート機能全体の責任者として、企業価値向上およびAI活用によるコーポレート機能の高度化を推進。
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