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戦略投資とファイナンス

戦略意思決定手法①不確実な状況で有効なフレーミング

第5回

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「ストラテジーテーブル」を活用した
“選択肢の洗い出し”と“適切な案の選択”

 1ページ目で、「意思決定とは、選択である」と紹介したように、戦略意思決定では、「考え得る最も適切な案を選択することが良い」とされています。とはいうものの、選択肢を考え出すのは難しいものです。ここでいう選択肢とは、「他に案は無いのか?」という問いに答えるものです。

 一般的に計画立案時には、この方向で行こう、という大まかな案を詳細化していくことが多いのではないかと思います。このような進め方をしてしまうと、その後の意思決定の段階で、「他に案は無いのか?」と言われても、関係者の考えが既に固定されてしまっていたり、ここまで考えたのにという抵抗感があったりして、他の選択肢を考え出すのは難しくなってしまいます。

 ということは、「計画を詳細化する前に、選択肢を洗い出しておくことが望ましい」わけです。しかし、とにかく何でも考えようという進め方では、あいまいで時間がかかり、しかも、選択肢が洗い出されているか確認することが出来ません。このようなときに、「ストラテジーテーブル」が役立ちます。

ストラテジーテーブルを活用して選択肢を洗い出す

ストラテジーテーブル

 「ストラテジーテーブル」は、以下のように使います。

  1. 選択可能な項目を洗い出す。そのためには、図3のようにバリューチェーンなどのフレームワーク(マーケティングのフレームワーク4つのPなど)を活用します。また、デシジョンヒエラルキーの、戦略レベルの項目との整合性も確認します。
  2. それぞれの項目について、選択可能な案を考える。
  3. それぞれの項目から、一つずつ案を選択してつなげていき、一つの案とする。

 ストラテジーテーブルが効果を発揮する具体的場面は、「他には案はないだろうか?案を出してみよう」と声をかけても、参加者がどうしたらよいかわからない、議論が始まらない、という場合です。このような場合に、さらさらとホワイトボードに上記のような表を書いて、ここを埋めていこう、と言い方を変えると参加者を巻き込みやすくなります。これは会議のその場でできる、簡単な工夫です。思考のプロセスを見える化することによって、現場の知恵や情報を活用することが可能になるわけです。しかも、このストラテジーテーブルで思いつくアイデアが書き出されていくと、議論のプロセスが共有化され、意思決定者だけでなく関係者の納得感も高まります。

 出された案について、利益などを比較し、最も望ましい案を選択できれば、ストラテジーテーブルの効果を十分に引き出したことになります。「他に案はないのか?」という疑問に対して明快に答えられるわけです。

 図3では、バリューチェーンの考え方を活用していますが、より簡単には、5W1Hや、whyを省略して、とにかくシンプルに、4W1Hでも、十分に役立ちます。

4W1Hを活用したストラテジーテーブル

 ところで、ストラテジーテーブルから導き出される案の数は、項目における案の数を掛け合わせた数なので、かなり大きな数になることがあります。(たとえば、図3のストラテジーテーブルで各項目に4案ずつあったとすると、4の7乗で16,484 通りの組み合わせがありえます)。したがって、各項目で出された案の実現性や他の項目との組み合わせを考慮して、案を絞り込む必要が生じます。

 それでは、いくつの案を検討すればよいのでしょうか。もちろんケースバイケースですが、必ず意識しなければならないのは「費用対効果の原則」です。社運や人生を賭けた企画であれば、10通りを超える案を緻密に検討することもあるかもしれません。一方で、スピード重視であれば、いくつもの案がありうることを承知したうえで、1つだけの案に絞って検討を進めることもあります。ある程度時間が取れるのであれば、3案程度を比較検討することが望ましいようです。

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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