“効果的なコミュニケーションツール”でもある
また、インフルエンスダイアグラムは、コミュニケーションのためにも有効です。もちろん、自分が理解した内容が適切かどうか、確認することにも役に立ちます。
「利益等に不確実性をもたらす影響要因を書き、その影響要因の相互関係を示すものである」というのが、そもそものインフルエンスダイアグラムの意味です。実際には、何が不確実なのかにはこだわらずにすべてが不確実であると考えて、まずはどんどん書いてみましょう。その後に、不確実なことと、不確実でないことを分けて考えることができれば、不確実性の検討によりフォーカスしたインフルエンスダイアグラムを書くことができます。
たとえば、運送費用が契約によって既に決められている場合には、不確実性の分析には運送費用は必要ありません。人件費の単価等も社内で標準原価が決まっていることがあり、そのような場合にはインフルエンスダイアグラムには書かないようにします。不確実性が低い項目を書かないことによって、大規模な複雑な事業であっても比較的単純化したインフルエンスダイアグアムを書くことが可能になります。関係者が重要な不確実要因の議論に集中する場合には、単純化したインフルエンスダイアグラムが良いでしょう。このような手法を用いることによって、たとえば電力会社のように大規模で複雑な事業に関しても、比較的コンパクトなインフルエンスダイアグラムを書くことができます。
いかがでしたでしょうか。戦略意思決定手法の中で、曖昧で複雑な考えを整理する手法をご紹介しました。実は、事業の現場で不確実と思われていることの中には、企画者の考えが曖昧で整理できていないことが原因になっていることがあります。今回ご紹介したデシジョンヒエラルキー、ストラテジーテーブル、インフルエンスダイアグラムを活用して、まずは自分の考えを整理し、同僚と共有してみてはいかがでしょうか。
さて、次回は、戦略意思決定における分析やシミュレーションをご紹介します。感度分析(トルネードチャート)、リスク分析(モンテカルロシミュレーション)や、デシジョンツリーを活用した期待値計算など、便利なツールが満載です。次回もどうぞお楽しみに!
- 籠屋邦夫、「選択と集中の意思決定」東洋経済新報社 2000年
- 福澤英弘、小川康、「不確実性分析実践講座」ファーストプレス 2009年