「デシジョンヒエラルキー」で
意思決定の範囲を定める
前ページで紹介したフレーミングの最も手軽なツールの1つが、「デシジョンヒエラルキー」です。
デシジョンヒエラルキーは、
- すでに方針として決定していること、
- これから決定すること、
- 後で決定すればよいこと、
の3つを示すチャートです。図2に示すように、デシジョンヒエラルキーは、2本の線を引いて決定を3つに分類するだけの、ごく簡単なものです。
このとき上位に来る状況(さきほどのチャートでは1)、つまり、すでに決定していることのレベルを「ポリシーレベル」と言います。ポリシーですから、重要な指針となる決定事項です。ポリシーレベルの決定事項が変更されることもありますが、それは、企画が仕切り直しになる重大な変更を意味します。
また、真ん中のレベル(さきほどのチャートでは2)、つまり、これから決定することを「戦略レベル」と言います。戦略意思決定の対象となり、これから議論・検討される部分です。
最も下のレベル(さきほどのチャートでは3)は、「戦術レベル」と言います。戦術レベルの事項は、戦略レベルが決まった後に検討すればよいものです。
デシジョンヒエラルキーを活用する効果の一つは、検討の時間を短縮することです。意思決定の対象範囲が共有されていないと検討範囲が広がり、混乱しやすくなりますが、デシジョンヒエラルキーを活用することによって、検討範囲を絞り込むことができます。特に、戦術レベル、つまり、後で検討すればよいことが明確になると、安心して早く検討を進めることができるようになります。
デシジョンヒエラルキーは、ポリシーレベルを明らかにしますので、上司の考えを知るためのコミュニケーションツールにもなります。とはいえ、実際はそうならないこともあります。たとえば、「うーん、何とも言えないなあ。とりあえずやってみてくれるかな」と、上司があいまいなコメントをすることも、時々あるわけです。このように、ポリシーレベルが不明確だと部下は苦労するのですが、実際のところ、新しい案件で上司も迷います。戦略投資のように、新しい不確実な大型の案件では、十分に起こりうる話です。
その場合は、「無理に決めずに、デシジョンヒエラルキーを活用して現状をしっかりと共有する」とよいでしょう。現場に近い部下からあげられる意見には、上司が知りえない不確実性に関する情報が含まれていることがあり、上司にとってもありがたいものです。検討が進んだら、上司にポリシーレベルを決めてもらう、ということも現場では起きているようです。
「戦略レベルの決定を誤解して戦術レベルを検討すると、戦術としては正しくても、そもそも問題設定(検討していること)がまちがっている」ということになりかねません。たとえば、販売商品がまだ選定されていない段階で、候補にあがっている商品にすばらしい名前をつけたとしても、その商品が販売されなければ意味がありません。これは、“木を見て森を見ず”といった状況です。
デシジョンヒエラルキーを使うと、それまでなかなか共有できていなかった上司・部下・同僚の考えを、改めて理解し共有することが可能になります。簡単なツールですから、周りの人と認識がずれていそう、と感じたときに、あるいは、できれば感じる前に通常のプロセスとして、活用してみてください。