ベンチャー企業として「社会インフラ」を選んだ理由
なぜGRIDは、大企業の十八番であるイメージが強い「社会インフラ」の領域に切り込んでいこうと思ったのだろうか。GRID代表の中村秀樹氏はもともと建築学科出身、海外のアトリエ事務所でアルバイトをしたり、展覧会を開いたりと活動を続ける中で、1995年の阪神淡路大震災で被災する。
阪神淡路大震災を機に、1年間ボランティアに参加したんです。その際に2ヶ月お風呂に入れなかったり、避難所生活を経験し、水・電気・ガスなどの社会インフラや、人々の生活を支えるコミュニティの大切さを実感したんです。
その後、建築デザインからインフラデザインの道を志し、重電関連会社で原子力のプロジェクトに携わる。ベンチャー企業勤務を経て、太陽光を中心とした再生エネルギーをメイン事業にしたGRIDを創業する。
太陽光といえばシャープ、京セラ、パナソニックといった大企業と競合になってしまいます。なので彼らが手を付けない領域をやろうということで、「高いところ、雪の多いところ、風の強いところ」でも通用する頑丈な発電パネルをつくり、ニッチな市場を狙うことにしたんです。
ニッチ市場であるが故に大企業が参入してこない。その一方で積雪地域の工務店に足を運ぶと、「太陽光パネルを設置したい」という声をもらうことがあったそうだ。そんな人々のニーズを捉えた事業を展開しているうちに、日本でも「2016年からの電力自由化」が発表される。
電力自由化によって電力会社が沢山登場した時に何が課題になるかというと、発電量と消費者が使う電力量をコントロールすることなんです。老舗の電力会社には専門部隊がいるものの、新興の電力会社にはそういったノウハウがない。なので、そこをアウトソーシングする業務を次は展開しようと考えました。
GRIDは3年ほど前から自社の発電所を作り、立てた仮説とその結果検証を行う中で、人工知能を活用することが増えてくると確信するに至った。現在GRIDは、自然エネルギーである風力、水力、太陽光の発電予測にはじまり、多岐にわたる人工知能による分析事業を手がけている。