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濱口秀司は語る「日本人のイノベーション力は最強だ」

濱口 秀司/「HPSWorld 2013」 基調講演レポート・後編

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MUJIで考える日本人がイノベーションに強いはずの理由

 濱口氏は、2010年のビジネス・オブ・デザイン・ウイーク(Business of Design Week:香港で開催されるアジア最大のデザイン総合イベント)にキーノートスピーカーとして招かれた。

 そのとき、海外の来場者からMUJIはすごい、どうすればMUJIのようなブランドが作れるのかという質問が非常に多く出されたという。そこで、濱口氏は、用意していたプレゼンに代えて、MUJIとは何かを説明することにした。

 濱口氏の「日本人イノベーション最強説」は、その発表などを発展させたものだ。以下はプレゼンの概要である。

 まず、人を対象物への反応のしかたで次のように分類してみよう。ステレオタイプだがお国柄で分けて考えてみる。

【AとBという2つの商品があるとき】

  • AかBか、どちらがいいかを言って、すぐに選べるタイプ。(アメリカ人的YES/NOはっきり思考)
  • AもBもどちらも良いところがあると言って、迷うタイプ。(日本人的「八百万の神」思考)

【A1、A2、A3など同様のものが複数あるとき】

  •  同じようなものでも数が多いほうが嬉しいタイプ。(中国人的「たくさんあることはいいことだ」思考)
  •  同じようなものなら1つでいいというタイプ。(ヨーロッパ人的質素倹約思考)

 以上の4つのタイプを図式化すると、図表5のようになる。

国と地域4つの対象物への反応のしかた▲ 図表5 国と地域4つの対象物への反応のしかた

 対極にあるのが、右上のアメリカ人と左下の日本人。アメリカ人は、ハンバーガーは小さいよりも大きいほうがいい、数はいっぱいあったほうがいい。反対に日本人は、優柔不断でどちらも捨てがたい。などと迷っているうちに、たまに龍安寺の石庭など究極にシンプルなものを生み出したりする。

 左上の中国人は、AもBも欲しいし、同じものでも数はたくさん欲しい。右下のヨーロッパ人は、AとBの選択は早いが、同じものなら数は少なくていいというシンプル指向もある。

 面白いのは、図の隣どうしは理解しやすい点だ。アメリカ人と中国人が仕事をしていて、いろいろたくさんあって嬉しいなというときは盛り上がる。ところがある時点で、アメリカ人が意思決定しようとすると、中国人が「待て、待て」と止めに入るといったことになる。対極どうしは、なかなか理解しあえない。

 MUJIは複数の選択肢の間でバランスを取ろうとする傾向と、究極の簡素化を目指す傾向が同居する「日本人そのもの」だ。

複数の選択肢の間でバランスを取り、簡素化する「日本人」的特徴▲ 図表6 複数の選択肢の間でバランスを取り、簡素化する「日本人」的特徴

日本人的思考の産物であるMUJIに対する外国人の反応

 日本人的なMUJIへの他国の人々の見方はそれぞれ異なる。濱口氏はその違いを以下のように説明する。

 中国人は、バランスと取ろうとしているのは分かるけれども、何でそんなにシンプルなの、と思う。イギリス人は、シンプルな点は理解できるけれども、何でそんなにバランスにこだわるのかが分からない。アメリカ人にとっては、何が何だかミステリアスすぎる

 この反応の違いは、MUJIの海外店舗数にも現れているようだ。イギリスに海外初進出して大成功を収め、中国でも支持が高まっているが、アメリカでは未だに4店舗にとどまっている(図5参照。図ではアメリカの店舗が3つとなっているがその後4店目がオープンした)。

世界のMUJIの店舗数▲ 図表7 世界のMUJIの店舗数

 濱口氏は、文化によって思考のパターンが異なり、それぞれの考え方は公平だと思っていたが、イノベーションという視点から見ると、日本人的な発想は強いのではないかと考えるようになった。

 すぐに1つに決めず、AもBもCも欲しいから、1つ1つのアイデアの背後にある良いところを落とさないようにしようとする。ただ、それらを全部積み上げて『大きなお城』を作ることはせず、あるとき積み上げてきたものを思いきって壊し、シンプリファイする。これが実は日本人の特性で、これまで述べてきたバイアス壊しのプロセスと非常に相性がいい

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日本人の弱点はフレームワークを「描く、創る」ができないこと

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