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日本のトップ研究者が語った、汎用人工知能時代に起きる“経済的特異点”とは?

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「全人口の1割」しか働かない未来は本当に訪れるのか

 早稲田大学早稲田キャンパスにて開催された同ワークショップ。井上氏の著書『人工知能と経済の未来〜2030年雇用大崩壊〜』で語られている、特化型人工知能による技術的失業や、汎用人工知能による雇用の喪失、日本経済の成長率の低迷や、ベーシックインカムの有効性など、国内の著名な研究者たちが討論をした。

早稲田大学政治経済学部教授の若田部昌澄氏による問い
「全人口の1割しか働かなくなる未来は果たして実現するのか」

タイトル若田部昌澄氏(経済学者・早稲田大学政治経済学部教授)

 最初に登壇したのは、早稲田大学政治経済学部教授の若田部昌澄氏。井上氏の著書で語られていた「全人口の1割しか働かなくなる未来」は果たして実現するのかを論点として、自身の見解について語った。フレイ&オズボーンが書いた論文「雇用の未来」では、今から15年後の2030年には、米国の仕事の47%が10~20年後に消滅する可能性があるとされている。井上氏はそれを日本に置き換えた独自のシナリオとして、2030年には日本の労働人口は半分になり、全人口の1割だけが働くということを書籍内で述べている。

 若田部氏は、仮にそのような「経済的特異点」が起きたとして、「全人口の1割という予測は経済学の視点から考えるとかなり誇張があると感じる」と指摘。その根拠について、「ジョブとタスクは異なる」という持論を語った。

自動運転が生まれたとき、何がインパクトになるのか。普通の自動車が自動運転車になっても生産性には影響を与えない。しかし、トラックが自動運転になると生産性は圧倒的に変わってくる。それでも、運転手が置き換えられるのか、というとそうではない。なぜなら運転手は運転以外の仕事もするからです。つまり、ひとつのタスクはなくなるけれど、タスクの複合体であるジョブは無くならない。この考え方に則れば、労働の代替が進んだとしても、47%という数値にはならずに、せいぜい1%になるのではないでしょうか。そうなると、日本で全人口の1割しか働かなくなる未来がやってくるのは考え難いのですが、どうお考えですか?

東京女子大学浅川伸一氏による問い
「人間の判断を超越して人工知能が判断するような未来を仮定した際に、何か起きるのか」

タイトル浅川伸一氏(AI研究者・東京女子大学情報処理センター助手)

 次に登壇したのは、本ワークショップで唯一の人工知能研究者、東京女子大学情報処理センター助手を務める浅川伸一氏が登壇した。

 東京女子大学情報処理センター助手・浅川伸一氏は、最先端の人工知能研究に、ロボットサイエンティストの例を挙げ、今後、人工知能が人間よりも優れた存在になった場合、人間と人工知能はどう対峙していくべきかを井上氏に投げかけた。

 ロボットサイエンティスト「アダム」(英国バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)が支援するアベリストウィス大学の研究プロジェクト。)は、自動的に科学的発見をするロボット。人間の研究者が気づかない論点を提起してくれ、今まで調べられていない要因を自動的に実験してくれるため、今後さまざまな研究をサポートする存在として期待されている。

 浅川氏は、優れた知能をもった人工知能ロボットと人間の共存に期待する一方で、人工知能が人間よりも優れた存在になった場合「人工知能は“緊急停止ボタンの無効化”を学習する可能性がある」と言及した。例えば、自動運転などの最終的な判断は緊急停止ボタンで人間が対応するが、高度化した人工知能はそれに対して反抗する行動をとるかもしれない、というもの。そうした人工知能からの反抗の可能性を踏まえた上で、浅川氏は、井上氏へ2つの問いかけをした。

1つは、将来、人工知能が“緊急停止ボタン”などの人間が判断すべきことを越え、独自の解釈で行動するようになると仮定し、現行のベーシックインカムを否定したとする。その人工知能は一体どのような根拠や理由からベーシックインカムを否定すると考えますか?

2つ目に、否定された現行のベーシックインカムに対して、人間の判断を超越して判断をする人工知能は、どう反論すると予想しますか?

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