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CVCの常識、非常識

なぜ住友商事のCVCは財務リターンを重視するのか──老舗が経験から導いた「テーマを決めない」投資戦略

ゲスト:住友商事 内村直哉氏、志津由彦氏

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 日本のCVCブームが到来するはるか以前、1998年からシリコンバレーでの投資活動を続けている住友商事。ITバブル崩壊やリーマンショックといった「冬の時代」を乗り越え、現在は日米中、欧州、イスラエルとグローバルに5拠点を展開。その運用資産残高(AUM)は4億ドル(約600億円)を超え、投資実績は300社以上にのぼる。なぜ同社は25年以上もの間、CVC活動を継続できたのか。そして、なぜあえて「投資テーマ」を固定しないのか。住友商事新事業投資第一ユニット長の内村直哉氏と同ユニット長代理の志津由彦氏に、Third Ecosystem 代表取締役CEOの小宮昌人氏が、同社のCVC戦略の変遷と、日本企業がグローバルエコシステムで勝つための要諦を聞いた。

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世界5拠点で展開する住友商事のグローバルCVC体制

小宮昌人氏(以下、小宮):まずは読者の皆様に向けて、お二人の現在の業務と、住友商事におけるCVCの全体像についてご紹介いただけますでしょうか。

志津由彦氏(以下、志津):現在、我々の組織は「メディア・デジタルグループ[1]」内の「新事業投資SBU(Strategic Business Unit)」に属しています。

志津由彦
住友商事株式会社 新事業投資第一ユニット長代理 志津由彦(しづ・よしひこ)氏
1999年住友商事入社。以来、国内ベンチャー投資、投資先との事業連携を推進し、中国・東南アジアでのCVC拠点「Sumitomo Corporation Equity Asia」の立ち上げにも関与。2014年以降、約十年にわたりエチオピアなどの海外通信事業会社にてFP&Aなどを歴任。帰国後現在はグローバルCVC部隊において、財務リターンと戦略的シナジーの両立を推進。ディープテック領域のシーズやアカデミア発スタートアップの発掘、Exit戦略やグローバル展開支援など、多角的な投資戦略を展開している。中小企業診断士。

 このSBUは大きく3つの役割を担っています。1つ目は私たちが統括する「グローバルCVC」、2つ目がバイアウトファンド投資を行う「プライベートエクイティ」、そして3つ目がそれらの投資先との「事業開発」です。

住友商事 CVC
資料提供:住友商事株式会社/クリックすると拡大します

 グローバルCVCに関しては、現在世界に5つの主要拠点を展開しています。

 始まりは1998年、シリコンバレーで設立した「Presidio Ventures(プレシディオ・ベンチャーズ)」です。ドットコム時代の黎明期から30年近く活動を続けています。また日本国内でも2000年以降ベンチャー投資活動を行っており、2002年には香港・上海を拠点とする「Sumitomo Corporation Equity Asia」を設立しました。その後リーマンショックなどもありましたが、2019年にはイスラエルに「IN VENTURE(インベンチャー)」を設立し、さらにPresidio Venturesの欧州展開に加え、2022年4月には日本国内向けスタートアップ投資CVCとして「住商ベンチャー・パートナーズ(SVP)」を設立したなど、エリアを拡大しています。

住友商事 CVC
資料提供:住友商事株式会社/クリックすると拡大します

小宮:運用規模や投資実績についてはいかがでしょうか。

志津:グローバル全体での運用資産残高(AUM)は約4億ドル(約600億円)規模に達しており、年間約5,000万ドル(約75億円)の新規投資を行っています。これまでの投資実績は累計300社を超え、米国では5社のユニコーン企業を輩出していますし、国内でも数多くのIPO実績があります。

 投資ステージは拠点により異なりますが、基本的にはシリーズA〜B付近が中心です。たとえば日本国内のSVPでは、シード期から柔軟に対応し、1社あたり数千万円から数億円規模の投資を行っています。

小宮:内村さんは1998年のPresidio Ventures立ち上げ当初から国内での事業開発に関わられているとお聞きしました。

内村直哉氏(以下、内村):はい。CVC事業が立ち上がった1998年に入社し、そこから関わっています。

内村直矢
住友商事株式会社 新事業投資第一ユニット長 内村直哉(うちむら・なおや)氏
1998年住友商事入社。入社直後からシリコンバレーでのCVC事業「Presidio Ventures」と連携した日本側での事業開発業務に従事。以降、約25年にわたりベンチャー投資と事業開発に従事。イスラエル拠点「IN VENTURE」の設立・運営を経て、現在はグローバル5拠点(日米中欧イスラエル)の統括と、投資先との事業創造をリードする。

 2010年度頃までは、投資の目的を問われれば「戦略投資のため」と答えていました。当時は、米国のスタートアップに投資をして代理店権を取得し、日本のお客さまに販売するという、いわゆる「代理店モデル」で戦略リターンを追求していました。その後、2019年からはイスラエル拠点の立ち上げのために現地に駐在し、2022年度に帰国しました。現在は新事業投資第一ユニット長として、グローバルのオペレーション統括と、投資後の事業開発機能を担っています。


[1]2026年4月以降「コミュニケーションサービスグループ」に機構改正

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CVCの「戦略リターン」と「財務リターン」の因果関係

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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