トレジャリーマネジメントシステムで利益が出る“からくり”とは?

第2回

 前回は、ローカルな資金管理では「当たり前」に出来ていた“企業の血液”たる資金の管理が、グローバルになるとできなくなってしまうその本質と背景およびどのような壁にぶち当たるのかを解説しました。今回は、その壁を打ち破るための「からくり」について、システム面での技術的な背景および資金管理業務の具体例なども交えて解説したいと思います。

[公開日]

[著] 深山 秀一

[タグ] ビジネスIT 企業戦略 CFO トレジャリーマネジメント 資金管理 財務

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トレジャリーマネジメントシステムのからくり~クラウドベースシステムの効果~

 まずは、トレジャリーマネジメントシステムのからくりの基盤となる、システム技術的な側面から解説していきます。

 近年のクラウド関連技術の進歩により、ITサービスのアウトソーシングが実現され、ITシステム自体を所有することなくシステムを利用することができるようになりました。また、係る運用業務も所有する必要が無くなり、その結果、キャパシティに関する制限や投資費用が低減されました。その結果、IT部門への負担も少なく比較的安価な価格帯でトレジャリーマネジメントシステム利用できるようになりました。

 クラウド関連技術の中核となるからくりの一つは、サーバやネットワークの仮想化技術とサーバおよびデータセンターの運用業務の集約化と標準化にあります。これは建設業界の以下のような状況に似ています。

 「今まで戸建住宅を一から建設していたものを、各部屋の規格や部品がおおよそ共通化・標準化された大規模なタワーマンションをまとめて建設することで、規模の経済メリットにより共通コストの分担による費用低減を実現しつつ、高品質の住宅が作れるようになった」という状況です。

 また、近年のFintechの発展により、特定の銀行だけではなく、複数の銀行の残高情報や支払指示等をまとめて一つのプラットフォームで管理することができるようになりました。このからくりはSWIFT(※1)に代表される銀行間の取引業務に使われるシステム言語(プロトコル)の世界レベルでの標準化とその利用用途の一般企業への開放と拡大にあります。特に2008年、低ボリュームのデータやり取りしか必要ない顧客向けの安価なサービスであるAlliance Liteや、2012年にはそれがクラウド型サービスになり利用者にサーバ保有を不要にしたAlliance Lite2 のリリースにより、クラウドベースでのマルチバンクのトレジャリーマネジメントシステムが大幅に普及していったのです。
(※1)SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SCRL)は、銀行間の国際金融取引に係る事務処理の機械化、合理化および自動処理化を推進するため、参加銀行間の国際金融取引に関するメッセージをコンピュータと通信回線を利用して伝送するネットワークシステム

 その効果としてグローバルなトレジャリーマネジメントにはだかる壁を乗り越える、以下のようなことが実現できるようになりました。

クラウドベースのトレジャリーマネジメントシステムクラウドベースのトレジャリーマネジメントシステムにより実現可能となったグローバルなシステム管理

 上記のように各種の壁を乗り越えることができ、グローバルなトレジャリーマネジメント業務がグループ全体視点で実行できるという状況がようやく実現できるようになりました。
 グローバルなトレジャリーマネジメント業務の高度化・効率化が必ず実現できるそのからくりとその手法をどのようなものがあるのでしょうか。次のページ以降でご紹介します。

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