ビジネスモデルのイノベーションだ、と集まってアイデアを生み出そうとしても、何もない状態から発想するのは至難の業。何冊か書籍を読んで方法論を学んでも、自社の製品やサービスでどのようなビジネスモデルが成り立つかはなかなかイメージができません。
そもそも、ビジネスモデルにはどんな種類があるのでしょうか。
翔泳社が10月3日(月)に刊行した『ビジネスモデル・ナビゲーター』には、原著者たちが300の成功事例から集約した55のビジネスモデルが掲載されています。これはつまり、収益を上げるための手法は55通りにまとめられるということです。
しかし、実際にイノベーションに乗り出しても、アイデアを思いつかない、考えついたモデルが成功するか分からない、社内で合意を得られない、なによりアイデア出しの作業がうまく進められないといった様々な課題が噴出します。それを解決する一助となるのが、『ビジネスモデル・ナビゲーター 55パターンカード』です。
カードには本書に掲載されている55パターンのビジネスモデルの名称と概要、適用方法、そしてそのモデルで成功してる日本企業の事例が記載されています。
手軽に持ち出して使用できるため、複数人でのアイデア出しには必須といえるアイテムです。ぜひ皆さんに活用していただきたく、『ビジネスモデル・ナビゲーター』の訳者、マキシマイズの渡邊哲さんとトランスコスモスの森田寿さんにこのカードの使い方をうかがいました(本書についてのインタビューはこちら)。
なぜ書籍だけでなくカードも必要なのか
渡邊:書籍で55のビジネスモデルが詳細に説明されているのなら、カードは必要ないと考えてしまいます。しかし、あえてカードが必要な理由があります。
第一に、カードゆえの手軽さがあります。新しいビジネスモデルを創造するためのワークショップやブレインストーミングを行うとしても、いちいち書籍でどんなビジネスモデルがあったか確認していては手間でしょう。ましてや何もないところからアイデアを生み出すことは難しいですから、カードをお題として発想し、アイデアを深めていくことができます。
第二に、アイデアが出やすくなれば、短い期間でいくつもビジネスモデルを考案することができます。そうすれば取捨選択ができるようになりますし、ブラッシュアップして画期的なアイデアを生み出しやすくなります。
第三に、すでに成果のあるビジネスモデルとして提案することができるようになります。例えば自分で画期的なアイデアを思いついたとして、いきなりそれを顧客に提案しても受け入れられることはありません。社内ですらそうかもしれません。ですが、カードに書かれたビジネスモデルを参考にしたのであれば、それはすでに大きな評価を得ているものですから、自分がたまたま思いついた実例のないビジネスモデルではないという説得力を持たせられます。
森田:カードが55枚というのもポイントです。ビジネスモデルは細かくしようと思えば100にでも200にでも分類できますが、それだと複雑すぎます。逆に10にまとめたら抽象的すぎて参考になりません。ワークショップの中で、55がいかにバランスの取れた数かは実感していただきたいですね。
カードを有効活用するにはチームのダイバーシティが鍵
渡邊:カードの使い方について、まずは55枚のうち5枚を選び、それをお題として自社に当てはめてアイデアを考えるのが一般的です。5人チームを複数作って、チームごとに作業するのがおすすめですね。
チームを作るときに意識したいのは、誰と一緒にやるかということです。ビジネスモデルやイノベーションは、どこの企業でもたいてい事業開発部や経営企画部が担当することになっているのではないでしょうか。これが実は罠なんです。
特定の部署だけで集まると偏ったアイデアしか出てきませんし、ましてや事業開発部から現場を充分に把握した意見が出てくるとは限りません。ですから、できるだけいろいろな部署から人を呼び、混成チームを作ることがポイントです。
また、可能なら社内だけでなく別の業界の人、顧客の声を代弁できる人を入れるとアイデアに幅が生まれます。ダイバーシティのあるチームで作業することで、理想論ではない、実現可能でかつ画期的なビジネスモデルを生み出すことができるのではないでしょうか。
自社に近いビジネスモデルから遠いところへと思考を広げる
渡邊:ワークショップの進行方向ですが、最初に選んだ5枚でまずはアイデアを出し合います。自社の製品やサービスを売るための新しいビジネスモデルを、カードに書かれたビジネスモデルに当てはめて考えるわけです。
そしてそのアイデアがどれくらい真似されにくいか、事業インパクトはどれくらいか、といった現実的な視点でビジネスモデルを作り上げていきます。もし他のアイデア、ビジネスモデルをもっと検討したいということであれば、また別のカードで考え直せばいいでしょう。このとき、直感的に自社の商品には合わなそうなカードを選ぶのがコツです。
森田:とはいっても日本の企業は今までの成功パターンや歴史、文化が根強いので、いきなり自社から遠そうなビジネスモデルを考えるのは難しいかもしれません。ですから、最初は類似しているビジネスモデルから取り組んでいくのがいいですね。これを類似法といいます。
だんだん頭が慣れてきたら、対極法という、自社とまったく関係なさそうなカードを選び、アイデアを出してブラッシュアップするとよいと思います。
渡邊:55枚からカードを選ぶのが難しく、具体的なイメージができないという声をよく聞きます。そういうときは、まず自社のビジネスを分析しましょう。モノを売っているのか、サービスを売っているのか。プロジェクト単位で手がけるのか、多売できるのか。あるいはBtoBかBtoCか。そういった特徴を明らかにしてから、自社と似ている業態で実績があるビジネスモデルを探してみるといいでしょう。各カードに記載されたビジネスモデルを利用した企業を路線図の形にマップしたビジネスモデルイノベーションの地下鉄路線図(『ビジネスモデル・ナビゲーター』P44参照)を参照するのも有効です。
カードの裏面には表面に書かれたビジネスモデルで成功している日本企業や具体的なサービスを取り上げていますので、自社に近い商品を売っているビジネスをしている企業を選び、そのビジネスモデルの場合に自社ならどうしたらいいかを考えるのが、最初の一歩には適していると思います。
もしアイデア出しで困ったときは、書籍に戻ってビジネスモデルの考え方を学び直すのもいいですし、他社が別のビジネスモデルを採用した場合の戦略を考えてみるのも頭の体操になるかもしれません。ぜひカードを活用して、ビジネスモデルにイノベーションを起こしていただきたいですね。
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