GICとは、貧困や環境問題といったグローバルな社会課題に対するソリューションアイデアを募集するイベント。イベント当日は、GICへの応募者の中から選ばれた6チームがプレゼンテーションを行い、自らのアイデアを披露した。
ファイナリストのアイデアは、環境、貧困、医療などの人類が直面している課題を、AI、ロボティクス、バイオなどのテクノロジーを用いて解決する、社会に対するインパクトが大きいものが多いのが印象的であった。
6チームの中から優勝を果たしたのは、食肉培養のプロジェクト「Shojinmeat Project」を手がける羽生雄毅氏だ。羽生氏には、シンギュラリティ大学で開催される、社会課題のソリューションをテーマとした約10週間の短期集中起業カリキュラムへの参加権が与えられる。
“途方もないチャレンジ”を成功させるための4つの要素
北野氏は自身が挑戦している世界的課題を解決するプロジェクトを「グランドチャレンジ」と呼び、自身の3つのグランドチャレンジ――「ロボカップ」「サスティナブル・リビング・アーキテクチャ」「ノーベル・チューリング・チャレンジ」について紹介した。
「ロボカップ」とは、2050年までに完全自律型のヒューマノイドチームがFIFAワールドカップで優勝することを目指したプロジェクト。「サスティナブル・リビング・アーキテクチャ」は、インフラがない途上国でも東京やシンガポールと同等の生活環境を実現するプロジェクト。「ノーベル・チューリング・チャレンジ」は、医学・生命科学分野でノーベル賞級の発明をする人工知能を開発するプロジェクトだ。
これらのプロジェクトに共通するのは、ミッション・ステートメントのわかりやすさ。誰にでも理解できるミッションを掲げることで、様々な研究分野や国家間を越境し、彼らを巻き込んでいく。
北野氏は、このような巨大プロジェクトの成功に必要な要素を「目標」「理論」「プラットフォーム」「マネジメント」の4つであると指摘する。
ロボカップの場合、「目標」は2050年に自律型ロボットがFIFAワールドカップで優勝することです。「理論」には、様々な研究者が情報交換を行い、研究を前進させるオープン・イノベーションを置きました。ロボカップという国際的なロボット大会が「プラットフォーム」となり、ロボカップ委員会が「マネジメント」を担当しています。
北野氏によれば、ロボカップは厳密にはグランドチャレンジではなく、ランドマークプロジェクトだという。両者の違いについて、次のように語ってくれた。
ロボットがサッカー大会で優勝することは、貧困や環境問題といった人類の課題を何も解決していませんよね。でも、この目標に向かう過程で発明された技術は、様々な分野に応用することができるんです。ロボカップは、多くの科学者を惹きつけるビジョンを掲げた、ランドマークプロジェクトとも言えるわけです。