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生成AIが戦略までも大量に生む時代に起こる、意思決定の課題──組織文化と人材育成で考えるチームづくり

第2回

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 2025年は「AIエージェント元年」として注目されています。生成AIの急速な進化によって、ビジネスの戦略立案は生成AIが担い、人間はその実行や合意形成を主導する時代が本格化するでしょう。しかし、優れたアイデアがあっても、それを現場で迅速かつ柔軟に形にしていく“強いチーム”がなければ成果は出ません。言い換えれば、AIの機能をどう使うか以上に、「企業のコミュニケーション文化」や「チームの組織体制」が競争力の源泉になるということです。つまり、「AIを最大限に活用するための組織コミュニケーションをどう作るか」、そして「チームで生成AIを最大限活用するための人材育成をどう行っていくか」が鍵になるということです。本稿では、生成AI時代のチームづくりについて、「コミュニケーションコストがカギを握る組織論」と「ジュニア・シニアの関係が変わる人材育成論」の両面から考察してみたいと思います。

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生成AIが戦略やアイデアを大量に生み出す時代の課題

 生成AIが生み出す戦略やアイデアの質は、これからますます高まっていくと予想されます。事業戦略の“正しさ”は、これまでコンサルや専門家が頭を悩ませていた課題ですが、今後はAIによるプラン生成があっという間に行われるようになるでしょう。「なるでしょう」と書いてしまいましたが、実際にはすでにその流れは進んでいます。我々も多くの案件ですでに生成AIによる戦略プラン作成を行い、事業戦略立案は大きく効率化・短縮化しています。

 とはいえ、優れた戦略とアイデアをもってしても、実行が伴わなければ何の意味もありません。ここでボトルネックになるのが人間同士のコミュニケーションです。多くの日本企業には稟議システムをはじめ、合意形成に時間を要するプロセスが根付いています。生成AIが「爆発的なアイデア」を創出できるようになればなるほど、「どの戦略を選び、どのタイミングで動くか」を決めるためのコミュニケーションコストが格段に増してしまうのです。

  • 戦略の“正しさ”よりも合意形成のスピードが成果を左右
  • 部署・ステークホルダーが増えるほど意思決定に時間がかかる
  • 生成AI由来のプランゆえに責任者が不明瞭になりやすいリスク

 AIが進化し続けるのを前提にするなら、いかに合意形成をスピーディーかつスムーズに行う組織体制を築くかが、これからの競争力を決定づけると言えるでしょう。

生成AIを活用できるのは意外にも「シニア層」である

 一方、現場レベルでは「生成AIをうまく使いこなせる人」と「そうでない人」の差が見えはじめています。生成AIは新しい技術であるがゆえに、直感的には若い世代の方がうまく生成AIを活用できそうですが、そんな単純な話でもありません。実は、ある程度のビジネス経験や俯瞰的視点を持ったシニア層ほど、生成AIのメリットを享受しやすくなっています。その理由は以下のようなものが挙げられます。

  • ビジネスフローを理解しているため「どこでAIを使えば効率化できるか」が見える
  • 生成AIのアウトプットが妥当かどうかを判断できる知見や経験がある

 このように、シニア人材が生成AIを使って超人的な生産性を発揮しはじめると、ジュニア層が担っていた仕事がシニア側だけで完結できてしまう場面が増える可能性があります。新しいテクノロジーを試行錯誤で取り込む柔軟性があるということが前提ではありますが、一部の現場ではすでにそういった流れは起こっています。

 生成AIは、これらすべてのフェーズに活用可能です。たとえば、事業機会の発見では、市場トレンドや競合分析を効率的に進めるツールとして、事業コンセプト創造では大量のアイデアを短時間で生成するクリエイティブなパートナーとして、その力を発揮します。

 結果として、

  • シニア層とジュニア層の経験値ギャップがさらに拡大する
  • ジュニア層に仕事を回す意義が薄れ、成長機会が奪われる
  • 組織の暗黙知やノウハウが共有されないまま仕事が進んでしまう

ということになりかねません。

 こうした構図が生まれてしまうと、企業は中長期的に人材不足や後継者育成の問題に直面するでしょう。AI活用の恩恵を受けにくいジュニア層をどのように支え、経験機会を作り出すかが組織にとって大きな課題となります。

次のページ
組織と人材育成という2つの側面から考える「生成AI時代のチームづくり」

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この記事の著者

AI Innovation Node(エーアイ イノベーション ノード)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

飯野 希(イイノ ノゾム)

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